今回は下町の温かさと利便性が融合した町、竹ノ塚周辺で髪技理容師に出会うためにリサーチをしていたところ、BARBER SHOP RAYMONDさんを見つけたので取材を申し込むと松原さんがインタビューに対応してくださった。松原氏は理容師歴27年、「切る」という技術に誇りとこだわりを持ち、お客様と「人と人」として付き合うことを大切にされている髪技理容師だ。
Profile
Takayuki Matsubara (松原 孝幸)
BARBER SHOP RAYMOND
理容師歴:27年
出身校:東京総合理容美容専門学校
出身地:富山県
得意技術:カット
得意スタイル:コンテスト経験を活かしたスタイル作り
こだわり:カットだけでお客様のご希望するスタイル幅を広げれるような技術を提供すること
趣味:特撮、仮面ライダー、ウルトラマン、ゴジラ、地域のボランティア活動
BARBER SHOP RAYMONDについて
まずはサロンへの道順を案内しよう。竹ノ塚駅東口を降り、りそな銀行の間の道を進む。真っ直ぐ進むと、右手に花屋(アボ。フローラ)があるのでその隣である。駅徒歩3分だ。
セット面2席の店内には、松原氏の趣味が随所に散りばめられ、マニアにはたまらない空間が広がっている。「切る」という技術に誇りとこだわりを持つサロンとして、従来のカット専門店とは一線を画し、「乱れ髪も格好良く」をモットーにしたカットの魅力と可能性を追求し続ける理容店、それがバーバーショップ レイモンドだ。
お店の簡単な紹介が済んだところで早速、松原氏のインタビューを進めていくとしよう。
BARBER SHOP RAYMOND 松原 孝幸氏
理容師を目指したきっかけ
バーバーなび:こんにちは、本日はよろしくお願いします。まず松原さんが理容師を目指すことになったきっかけを教えてください。
松原氏:よろしくお願いします。本当は警察官になって刑事になりたかったんです。元々柔道をやっていたので、警察官になれるコネクションはあったんですけど、頭が足りなくて落ちちゃいました。その後、弟が100年続く実家の床屋を継いだのを見て、「じゃあ自分はこっちで理容室やってみようかな」って、ちょっとした勢いで思ったんです。当時は途方に暮れていた時期で、親から「家業やってみたら?」と言われたのがきっかけで始めたので正直、最初はなりたくてなったわけではなかったんですよね。
バーバーなび:ありがとうございます。最初は警察官になりたかったんですね。
松原氏:そうですね。今は宣伝しなくても、店内の雰囲気を外から見て「何のお店かな?」って気にしてもらえたりして、好きなようにやれているので良かったなって思っています。
お客さんには、デバイスで検索させないと意味がないって思っているので、あえて大きな看板を出したり、営業時間やメニューを目立たせたりしていないんです。うちの店って、一見するとおもちゃ屋さんなのか雑貨屋さんなのか、カフェなのかバーなのか、何だかよくわからない感じになっているので「なんだろう」って検索してもらえるきっかけになっていると思うし、その検索結果からすぐ来店に繋がらなくても、半年とか1年後に「あそこに床屋があったな」って思い出して来てもらえることもあるのかなって思っています。
理容業界への思い
バーバーなび:理容業界全体に対してどのような思いや考えをお持ちですか?
松原氏:さっさと理容と美容が一緒になったらいいと思います。逆のことを言う人もいると思うんですけど、僕はやっていることはさほど変わらない業界同士が、昔のしがらみや大人同士の事情で組合も今は完全に分かれているし、勿体無いと思うんですよね。
理容師は顔剃りが強みかもしれないけど、グレーゾーンでやっている美容室もあるわけですから、もうそれならそれぞれの強みを活かせるように1つの組合にしちゃったほうがいいんじゃないかなって思います。
専門学校も、国家資格も分かれちゃってるし、教科書も理容理論と美容理論が違うくらいなのにどちらの資格も欲しいってなった時はもう一度通わなくちゃいけない。それってお金も時間も倍かかってしまうわけだから無駄な時間ですよね。それだったら専門学校を3,4年にでもして、もっと若い子達が両方の技術をちゃんと一度で身に付けることのできる環境を作ることが業界で必要だと思うし、お客さんのためになると思うんです。
大人のしがらみなんて正直どうだっていいから、お客さんに満足してもらえる環境だったり、これからの若い子達が学びやすい環境を作るってところに力を入れていくことが重要だと思います。
バーバーなび:理美容の垣根が、成り手不足の問題にも直結する問題になっているのかもしれないですね。
松原氏:そうですね。垣根がなくなることは、組合としてもニーズが増えるしより強化されていいと思います。ただ、昔カットだけのサロンが出てきた時に「カットだけの資格を作ればいいんじゃないか」って話も出たんだけど、それはまた別の話でよくないんですよね。それを作っちゃうと海外から、その資格を取りに来る人が増えてしまう。それだとどんどんレベルが下がってしまいますよね。だから、レベルを落とさずにこの業界を発展させていくためには僕の思いとしては理美容を一緒にしてしまうことだって思います。
そこにはいろんな事情があるわけだから反対派の人ももちろんいますし、簡単じゃない問題なんでしょうけど僕の思いはこんな感じです。
髪技理容師としてのこだわり
バーバーなび:それではこだわりを教えてください。
松原氏:僕は自分でやっているサロンだからこそ、来てくれるお客さんとは対等な関係でいたいし、友達感覚で接したいと思っています。実際、新規のお客さん以外はお客さんってスタイルで来店されることは少ないし、一緒に飲みに行く仲の人もいれば、逆に気に食わないことがあれば、僕から思いっきり叱ることだってあります。
極端な話、ここでは「俺が神様」っていうスタンスでやってるので、「お客様が神様」っていう考え方は、うちでは通用しないんです(笑)。
技術に関してはあえてアピールしないこと。たとえば「コンテストでこんな賞を取りました」とか、そういう技術があるのはこの世界では当たり前だからむしろ、わざわざ言わないと伝わらないような技術を売りにする人は、この仕事に向いていないんじゃないかなと思います。
もし経営するなら技術だけではなく、それ以外の部分で勝負することが大切だから、人柄や個性をアピールしていくべきだと思うし、そうしていかないとこの業界で長く続けることは難しいと思います。技術をアピールしすぎると、逆に変な期待を持たれることもあるし、「何も期待しないで来てくれたら、その期待値を超えてみせるから」っていうスタンスでやっているので、例えばInstagramでスタイル写真を大量にアップしてハードルを上げるサロンも多いけど、うちは一切ヘアスタイルの写真を載せないんです。同じ角度から撮ったビフォーアフターの写真には全然興味がないし、それよりも僕のキャラクターを伝えられるような遊びの投稿をしたいと思っています。
だからか、うちに来るお客さんってあまり鏡を見ないんですよね。「喋りに来てるんじゃないか」って思うくらい、椅子に座った瞬間に「はい、切って」って言われることも多いです。そのたびに「いつも通りでいいんだな?変えたいなら今のうちに言わないと、もう切っちゃうぞ」って確認しますけど。
僕の性格的に、お客さんに「馬鹿じゃないの」とか「お前さあ」とか言っちゃうこともあるし、遅刻されたら思いっきり怒ります。正直、ちょっと非常識だなと思う自分もいますけど、それでもまた来てくれるお客さんがいるのは不思議ですよね。こんな感じでやっているのでこのスタイルが苦手な人もいれば、好きな人もいるでしょう。でも、通ってくれているお客さんはきっと僕やこの空間が好きで来てくれているはずだし、ある意味で自然とお客さんをこちらで選別できているような感覚もあるので、自分としても楽なんですよ。好きで通ってくれる人たちとの方が、関係が長続きするし、引っ越しとか特別な理由がない限り離れていくことも少ないですから。
でも、そんな風に接することで、お客さんにとっての居場所を作れているのかもしれないし、それがこのサロンに集まってくれる理由なのかなと思ったりします。
バーバーなび:松原さんの人柄に惚れて、みなさんここへ来店されているんですね。
松原氏:そうだと嬉しいですね。技術はこっちが勝手に磨くものだから、他のところで勝負すること。
あとは地域ナンバーワンを目指さないことですね。
ここ竹ノ塚だと8万人の人がいるので、その中の何人がうちに来てくれて何人が回転してくれるかでスタッフの人数でも変わってくると思うけど、うちだと3000人に好かれればいいわけです。みんなに好かれるために動くのは大変だし、逆に雰囲気やコンセプトがブレてしまう原因になると思います。ふるいにかけて、うちの雰囲気が好きだと言って集まってくれる人たちを大切にしていきたいし、そういう人たちに囲まれることで、僕自身も楽しく長く続けていける気がして、サロンの軸をしっかり持っていられると思うんです。
お客様へのメッセージ
バーバーなび:どのようなお客様にお店に来て欲しいですか?
松原氏:僕のこの雰囲気を好きでいてくれる方に来てもらえたら嬉しいですね。できれば、一緒に飲みに行けるような距離感でお付き合いできるお客さんだと最高です。お客さんとは、兄弟や家族みたいな感覚で接したいし、お互いに悩みを共有したり、「人としての付き合い」を大事にしていきたいと思っています。だから、人としての関係が築けないとか、生理的に合わないなっていう方だと正直難しいかもしれません。でも、そうじゃない方なら、ぜひ気軽に来ていただきたいですね。一緒に楽しい時間を過ごせる関係が理想です。
バーバーなび:人と人として付き合っていける人に来ていただけるとお互いに嬉しいですね。
松原氏:そうですね。極端な話、お客さんとしてじゃなくてもいいから「ちょっとお店を見せてよ」って気軽に入ってきてくれる方がいるのも嬉しいですね。それがきっかけで「あそこにちょっと変わったお店があるよ」って噂になれば、それを聞いた別の人が興味を持って、最終的にお客さんになってくれるかもしれません。そういう広がり方って、なんだか自然でいいなと思うんです。いわゆる宣伝らしい宣伝はせず、「宣伝をしないことを宣伝する」みたいなスタンスを大事にしたいですね。
バーバーなび:興味を持ってくれた人に来ていただきたいですね。
未来の理容師に向けたメッセージ
バーバーなび:理容師を目指す若者に向けたメッセージをお願いできますか。
松原氏:まずはセンスとかよりも、基礎をしっかり身につけるのが大事です。基礎ができてるからこそ、その上にセンスを足したり、自分らしさを出せたりするから基礎が99%で、残りの1%がセンスって感じです。だからまずは、基礎をしっかり勉強して、あとはその1%を活かしていけばいいと思います。
でも、そこを逆に考えちゃう人も結構いるんですよね。基礎がちゃんとできてないのに先にセンスばかりを意識して、センスばっかり追いかけちゃう。そうすると結局、中途半端になって下手に見えちゃうし、それって僕らからすると「ちょっと生意気じゃない?」って感じることもあります。焦らずに基礎を固めることが本当に大事だから、逆にそこがちゃんとできていれば、いくらでもセンスも個性も乗せていくことができて楽しくなると思いますよ!
バーバーなび:基礎をしっかりと学生のうちに学ぶことが大切なんですね。
松原氏:中には「うちで働かせてください」って学生さんから問い合わせが来ることもあるんですけど、その理由を聞いてみると「カット専門店だと聞いたから」って言うんですよね。でも、カットしかできないからカット専門店をやっているわけじゃなくて、すべてのベースをしっかり積み重ねた上でカット専門店としてやっているんです。だから、その辺を勘違いしないでほしいなと思って、お断りしました。
どの業界でも同じだと思うんですけど、やっぱり20代のうちは馬車馬のように働いて、経験を積んで、苦労しないといけないと思うんです。お金とか福利厚生、立地とかブランドにこだわるよりも、まずは自分自身を鍛えることが大事。学生時代に成績が良かったとしても、社会に出たらその評価が通用するわけじゃないので、そこは変に夢を持たせすぎたくないし、必要以上にプライドを高く持っている学生さんには、そのプライドは一旦置いてきた方がいいよと伝えたいですし、そうしないと現実を知ってすぐに辞めてしまうこともあると思うんです。
だから最初にしっかり伝えておくことが大事だと思うし、その上で理容師を目指してくれたら嬉しいですね。
バーバーなび:とてもストレートで、ためになる素敵なメッセージをありがとうございました。
店舗基本情報
店舗名 | BARBER SHOP RAYMOND |
住所 | 東京都足立区竹の塚1-29-11 アーバンステージ竹の塚102号室 |
営業時間・定休日 | – |
最寄駅沿線 | 東武スカイツリーライン |
最寄駅 | 竹ノ塚駅 |
電話番号 | 03-6320-7259 |
ホームページ | https://beauty.hotpepper.jp/slnH000367958/ |
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