THE STYLIST INTERVIEW
理容師特集
バーバーウテナ2号店 上林 晃
今回は、以前取材させていただいたお顔そりルームTree佐藤さんにご紹介いただき、早稲田にあるバーバーウテナ2号店の上林さんを取材させていただいた。上林氏は理容師歴10年目、海外での経験も活かし、目に見えないちょっとした気遣いなどからお客様の「すごく良かった」と感じていただけるサービスにこだわりを持つ髪技理容師だ。
CREDIT : Photo/Yuki 文/Yuki 編集/Manami(バーバーなび)
バーバーウテナ2号店
上林 晃(Akira Kanbayashi)
理容師歴:10年目
出身校:中央理美容専門学校
出身地:山形県
得意技術:東京、大阪、ベトナムなど様々なエリアでの経験を通じて、多様な人に合わせる技術
得意スタイル:ツーブロックスタイル
こだわり:「いかにセットしやすいスタイルか」を最重視した提案
趣味:サッカー、フットサル、ボルダリング
サロン紹介
まずはサロンへの道順を案内しよう。東京メトロ東西線・早稲田駅1番出口から地上に上がり、通りを左に進む。1つ目の信号を左折後、直進し、早大通りに出たらそのまま信号を渡る。細くなる道を進むと左手に当サロンが見えてくる。サロン名が記載されたお洒落な看板が目印になるだろう。
木目の温もりとレトロな趣を感じさせる内装は、世代を問わず通いやすい居心地の良さを演出している。髪質や骨格に合わせたカット、理容師ならではの本格シェービング、頭皮からリフレッシュできるヘッドスパなど、幅広いメニューを揃えているため、安心して身を任せられるバーバーをお探しの方にはぜひ一度訪れていただきたい。
理容師を目指したきっかけ
バーバーなび:こんにちは。本日はよろしくお願いいたします。まずは、上林さんが理容師を目指すようになったきっかけを教えていただけますか。
上林氏:よろしくお願いいたします。私の場合、両親だけでなく祖父母も理容師をやっていて、理容師という存在が幼い頃からすごく身近にあり自然と目指していました。高校生の時に進路を考える際、一度だけ調理師になりたいと思った時期もありましたが、最終的に理容師になりたいという思いが強くなり、家族と同じ理容師の道を選んだ形ですね。
バーバーなび:専門学校に進学される際に東京に来られたわけですね。
上林氏:そうですね。専門学校に入学するタイミングで前に勤めていたサロンに入社する形になりました。専門学校で「サロン通学」という制度があり、学校に通いながらお店で働くことができました。実は、私の父親が山形県の理容組合で講師をやっていて、その繋がりで東京の知人理容師の方を紹介してもらい、それをきっかけに通常の理容師さんとは順番が逆で、まず「ここで働きたい」というお店を決めてから「サロン通学」の制度を利用して東京に来ました。当時はかなり珍しいケースでしたね。
理容業界への思い
バーバーなび:理容業界全体に対して、どのようなお考えをお持ちですか。
上林氏:理容業界は、手職という点でもすごく価値があり、非常に魅力的な業界だと感じています。一般的な会社員と比べて、修行期間など最初は時間を使いますし、仕事とプライベートの境目が見えなくなることもありますが、本当に好きな人にとっては魅力的です。ただ、少し閉鎖的な業界だとも思っていて、その魅力が世の中に伝わりきっていないために、成り手不足に陥っている現状があると考えています。
バーバーなび:その魅力を伝えるために、どのようなことが必要だとお考えですか?
上林氏:他の業種とのコラボや魅力の伝え方をもっと工夫すべきだと思っています。以前、夏休み期間中に「子ども食堂」で、貧しい家庭の子供を無料でカットするという企画で、子供たちが無料で理容師体験できる企画があったのですが、そういう活動はすごく良いと思います。子供たちが「かっこよくしてもらって感動した、僕もこんな風に人をかっこよくする仕事がしたい」と思ってくれて、それが理容師を目指すきっかけになったら、こんなに素晴らしいことはないですよね。
あとは、お客様からのアイデアも積極的に取り入れていきたいです。自分たちでは気づかないような発見があり、そういったお客様目線の意見も取り入れながら、より理容の魅力や価値を発信していけば、きっと人も増え、業界全体の価値も上がっていくはずです。今のまま、時間とお金を使って修行し、安い給料で働かなければいけないというイメージだけでは、この業界に未来はないと感じるので、多くの人に知ってもらうことが本当に重要ですよね。
髪技理容師としてのこだわり
バーバーなび:それでは、こだわりについて教えていただけますか。
上林氏:何よりも「お客様ファースト」であることを心がけています。お客様ファーストとは何かというと、お客様が安心してくつろげる空間と時間を演出すること。例えばカットクロスの中が暑くないか、お客様が今どのような状態なのか、表情や汗一つといった微妙な変化を見逃さないようにすることです。お客様ごとに求める接客や距離感も違うので、それを最大限にキャッチできるよう常に表情や状態を観察しています。
バーバーなび:その細やかな気配りや洞察力は、やはりこれまでのご経験から培われたものなのでしょうか?
上林氏:そうですね。東京、大阪、ベトナムでの経験が大きいです。例えば、小さい子が髪を引っ張られるのが嫌ということを聞き、髪を引っ張らないように通りが良く優しい当たりの櫛を探したりしました。また、お客様がお酒を飲んで来店し、途中で青ざめて倒れそうになった経験もあり、お客様の体調の変化を注意深く見るようになりました。ベトナムでは、暑さの影響で皆短いスタイルを好むなど、気候がスタイルに与える影響の大きさを実感しました。そういった経験から、お客様に一番寄り添うような接客と技術を心がけています。
お客様に「この人にやってもらってよかった」「すごく気が利く人だった」と感じていただけるのが理想です。良い接客というのは目立たないもので「なぜかわからないけれど、すごく良かった」と感じて帰ってもらえるのが一番良いサービスだと思っています。目に見えないちょっとした気遣いや気の利いた行動がお客様の心に残っていただけると嬉しいです。
お客様へのメッセージ
バーバーなび:どのようなお客様にご来店いただけると嬉しいですか。
上林氏:理容という仕事は、私自身「贅沢品」だと思っています。髪を切らなければ死ぬわけではありませんから(笑)だからこそ、ただ髪を切るだけでなく、例えば嫌なことがあった時や家族喧嘩をして家に居づらい時など、どんな理由でもいいので、気軽にフラッと来られるようなお店でありたいです。
バーバーなび:癒しの場所であったり、心の拠り所にもなりうるわけですね。
上林氏:そうですね。ここに来たら元気になれる、ゆっくりできる、そんな風に感じていただける場所が理想です。どんな理由でも構いませんので、少し気分転換したいな、ゆっくりしたいな、そういった時にふと当店を思い出していただけたら嬉しいです。当店の近くには大学の寮や日本語学校もあるので、学生さんからご家族連れ、そして外国人のお客様まで、本当に幅広い世代の方がいらっしゃいます。どなたでも「気軽に」来ていただけたらと思います。
未来の理容師に向けたメッセージ
バーバーなび:理容師を目指す若い方々に、メッセージをお願いできますか。
上林氏:理容業界は魅力のある業界だとお話しましたが、ただ理容師という仕事だけを見ていると、どうしても視野が狭くなってしまう部分もあると思います。ですから、まずは理容師として生きていく上で絶対に必要となる技術と接客をしっかりと学んだ上で、それだけにとどまらず、ぜひ「いろいろな世界」に興味を持って、様々なことを学んでほしいと思います。
私自身も、ベトナムや大阪での経験を通じて、考え方や物事の見方が大きく変わりました。お客様から他の仕事の世界を教えてもらうことで固定概念を覆されることもありました。そういった経験は、理容師を目指す皆さんにとっても貴重なものになるはずです。理容師はきちんとした技術と接客ができれば、どこに行っても通用する仕事なので、だからこそ、まずは土台となる技術と接客をしっかり身につけて、その上で色々な世界を見て、自身の可能性を広げていってほしいですね。
バーバーなび:素敵なメッセージありがとうございます!