THE STYLIST INTERVIEW
理容師特集
Hair Base JERMA 蓑輪 涼樹
今回は川口市エリアで理容室をリサーチしていたところ、Hair Base JERMAさんを見つけ、取材を申し込むと蓑輪 涼樹氏が快諾してくださった。蓑輪氏は、総合調髪の理念を大切にしながら、時代の変化に柔軟に対応し、探求と追究を重ねられている。取材を通して印象的だったのは、説得力ある言葉と確かな信念。限られた時間が惜しいほどの熱意を込めて語られる一つひとつの言葉には強い力があり、思わず頷かされる場面が何度もあった。理容師という職業への誇りと覚悟がにじみ出る、まさに髪技理容師だ。
CREDIT : Photo/Yuki 文/Yuki 編集/Manami(バーバーなび)
Hair Base JERMA
蓑輪 涼樹
理容師歴:11年目
出身校:国際理容美容専門学校
出身地:埼玉県川口市
得意技術:フェード、パーマ
得意スタイル:動きのあるスタイル
趣味:筋トレ、ゴルフ、テニス
サロン紹介
まずはサロンへの道順を案内しよう。東川口駅南口を出てすぐの階段を上り、ロータリーへ向かう。そこから伸びる上り坂を一本道で進むと、左手に見えるマンションの一階が当サロンだ。
当店は「通いやすいバーバーショップ」をコンセプトに、初めてでも気軽に通える親しみやすさと、トレンドに合わせたスタイルを提案している。髪質に合わせた高い技術力のカットを提供し、映画を観ることができるバーカウンターや、古着販売を行うセンスあふれる店内も魅力だ。
理容師を目指したきっかけ
バーバーなび:こんにちは。本日はよろしくお願いします。まずは蓑輪さんが理容師を志すきっかけを教えてください。
蓑輪氏:よろしくお願いします。もともとは美容師を目指していました。理容業界については、理容室に通ったこともなく、正直なところ古い床屋というイメージしかありませんでした。そんな中、専門学校の体験入学に参加した際、先生に「メンズをやりたい」という思いを伝えたところ、初めて理容科という選択肢を提示され驚きました。それまで全く視野に入れていなかった理容を、そこから意識するようになりました。
バーバーなび:なるほど。体験入学をきっかけに少しずつ美容から理容へと変化していったのですね。
蓑輪氏:はい。実際にサロンを見てみると、理容業界には昔ながらの床屋だけではなく、美容室のような雰囲気を持つ理容室や、メンズオンリーサロンがあることを知りました。その時に「理容室は想像していた以上にかっこいい」と感じ、理容師の道を意識し始めました。正直それまでは自分の髪も美容室でしか切ったことがありませんでしたが、通っていた美容室を見渡すと来店客の8割が女性でした。自分がやりたいスタイルを扱えるのはどちらかと考えた時やはり「メンズをメインにしたい」という思いが根底にはあったので、その希望を実現できるのは理容師だと確信しました。
理容業界への思い
バーバーなび:理容業界全体に対してどのような思いや考えをお持ちですか?
蓑輪氏:ここ数年で理容のブランディングが進み、その魅力がより広く認知されるようになってきたと感じています。昔ながらの理容室にも変わらぬ良さがあり、その土台があるからこそ今の発展があります。時代の移り変わりとともに人々の価値観やライフスタイルが変化する中で、理容のあり方も少しずつ形を変えながら進化してきていると感じています。
バーバーなび:確かに、理容に対する世間のイメージは昔と今では変わってきていますね。
蓑輪氏:はい。その中でも私は「総合調髪」という昔からのメニューがとても重要だと考えています。理容は「首から上をすべて整える」のが本来の姿だと聞いたことがあります。総合調髪にはシェービングが基本メニューとして含まれていますが、最近はシェービングを行わないサロンも増えてきていると耳にします。様々な事情があってのサロンの在り方があると思いますが、私はシェービングという基本技術を大切にし、その上で流行を取り入れることが重要だと思っています。なので、もともとある価値を失わず、時代が変わっても揺るがない部分を高めていくことが理容の本質だと考えています。もし現在のフェードやバーバースタイルといった流行が廃れたとき、基本となる技術がなければ理容そのものがどうなってしまうのか、不安を覚えることすらあります。だからこそ、首から上を整える総合調髪を軸としたサロンづくりを続けていきたい。流行を取り入れながらも、理容の本来の良さを失わせずに次の世代へ受け継いでいく。流行に囚われすぎず、原点を忘れないことを何より大切にしたいと思っています。
バーバーなび:理容の良さを守りながら、その価値を次世代へつなげていきたいですね。
髪技理容師としてのこだわり
バーバーなび:それではこだわりを教えてください。
蓑輪氏:当店はメンズオンリーサロンとして、男性にとって心地よい空間づくりを心がけています。例えば、内装はインダストリアル系で統一し、お客様同士の視線が合いにくいよう、外に向かって目線が抜ける設計にしています。待合スペースは周囲を見渡せるようにしていますが、席に着けばプライベートな空間を確保できるよう工夫しています。男性は習慣的に同じ場所へ通う方が多いため、心地よさは必須です。だからこそ「長く通っていただきたい」「長く通っていただいているお客様に快適に過ごしていただきたい」という思いから、この空間設計にこだわっています。
バーバーなび:お客様が快適に過ごせる空間作りを重視されているのですね。技術やカウンセリングについてはどのようなこだわりがありますか?
蓑輪氏:お客様が思っている気持ちをより引き出すカウンセリングとコミュニケーションを重視しています。会話の中からどんなライフスタイルを送っているのか、あるいは今悩みを抱えているかもしれないといった部分に気づき、形にしていくことが大切だと思っています。お客様にとって大切なのは、髪型ができたという事実はもちろんですが、ここで過ごした時間そのものが有益だったと感じてもらうことです。技術を磨くのはもちろんですが、その技術が相手に理解されるためのコミュニケーションが重要だと考えています。
お客様へのメッセージ
バーバーなび:どのようなお客様にお店に来て欲しいですか?
蓑輪氏:現在来てくださっているお客様は、仕事上の繋がりというよりも、人と人との関係性を大切にしてくださる方が多いです。私としては、お互いに尊重し合える関係を築ける方が理想です。もちろんそうでない方でも良い時間を過ごしていただけると思いますが、「今の自分を変えたい」という思いが外見だけでなく内面から湧き上がっている方に来ていただけると、より良い関係性を築けるのではないかと感じています。
バーバーなび:なるほど。外見だけでなく、内面からの変化を大切にされているのですね。
蓑輪氏:はい。例えば、お客様から「似合う髪型にしてください」と言われることがありますが、私にとって似合う髪型とは、お客様自身がそのスタイルを受け入れられるかどうかだと思っています。決して一つの正解があるわけではありません。だからこそ、内面からアプローチし、自己肯定感を持つことから始めることが大切です。その結果として、自分の中で「良い」と感じる髪型も変化していくのです。外見だけでなく、内面からも変わりたいと願う方に対しては、全力でサポートさせていただきますし、ここに来ることで思いが変わり、内面的な変化につながることがあれば嬉しいなって思います。
未来の理容師に向けたメッセージ
バーバーなび:理容師を目指す若者に向けたメッセージをお願いできますか。
蓑輪氏:蓑輪氏:私がこの世界に入った頃と今とでは状況が大きく異なりますし、現在の理容室の姿が5年後、10年後もそのまま続いているとは思っていません。だからこそ、いま目にしているものを「希望」として捉えるのではなく、あくまで「きっかけ」と考え、これからの業界をどう良くしていくかを意識することが必要だと思います。自分の「なりたい」という前向きな気持ちが、業界をさらに良くしていく原動力になるはずです。その気持ちが周囲のためにもつながると考えれば、自然と業界を盛り上げるきっかけにもなるでしょう。技術を習得することはもちろん大切ですが、それをどのように人に還元するか——技術なのか、人間力なのか、様々な形で考えることができます。最終的に自分が考えていることや姿勢は、必ず周りに発信されていきます。だからこそ、いま抱いている気持ちを忘れずに努力を続けてほしい。そうすれば、将来この業界は今とは全く異なる、より良い姿へと進化していくと信じています。す。最終的に自分が考えていることは周りに発信されていくものですから、今あるその気持ちを忘れずに頑張ってもらえれば、いずれは今の業界とは全く別の、より良い形になっていくと信じています。
バーバーなび:素敵なメッセージをありがとうございました。