理容ヒビヤ 飯田 厚志

今回は以前バーバーなびでご紹介させていただいたki caeraの金谷 実智惠さんにご紹介いただき、理容ヒビヤの飯田 厚志さんを取材させていただいた。飯田氏は理容師歴39年、徹底した衛生管理と誠実な技術でお客様に安心と信頼を届けてこられた。呼吸を整え、相手と息を合わせる施術に込められたのは、一人ひとりを想う深いこだわりである。努力を惜しまず、理容の本質を体現し続けるまさに髪技理容師だ。

CREDIT : Photo/Yuki 文/Yuki 編集/Manami(バーバーなび)

理容ヒビヤ

飯田 厚志

理容師歴:39年
出身校:国際理容専門学校
出身地:栃木県
得意技術:マッサージ、ヘッドスパ、もみシャンプーなどリラクゼーション系の技術
得意スタイル:骨格を意識した無理のないスタイル
こだわり:髪の毛が喜ぶように切ること
趣味:アコースティックギター(ソロギター)、ソロキャンプ

サロン紹介

まずはサロンへの道順をご案内しよう。日比谷駅A5出口を出てすぐの横断歩道を渡り、そのまま直進。東京ミッドタウン日比谷3F「HIBIYA CENTRAL MARKET」内に位置している。

当サロンはセット面がブラウンを基調にしたクラシックな空間。木目のフロアとレンガタイルの壁が温かみを生み、落ち着きを演出する。上質なバーバーチェアを備え、格調と寛ぎを両立させた場だ。

理容師を目指したきっかけ

こんにちは。本日はよろしくお願いいたします。まずは飯田さんが理容師を目指されたきっかけを教えていただけますか。

飯田氏: よろしくお願いいたします。きっかけについては自分でもはっきりとは分からない部分もあります。ただ、私には4歳下の弟がいて、彼がまだ2歳くらいの頃、髪がくせ毛でぴょんと跳ねてしまうのを見ると、どうしても切りたくなって切ってしまっていました。当然のように親からは叱られるのですが、また髪が伸びて跳ねると切ってしまう、ということを繰り返していたのです。私の記憶に残っている中では、小学校2年生の時に親が残していたテープレコーダーに「将来は髪を切る人になる」と話していたようで、その頃から自然に理容師を目指していたのだと思います。

バーバーなび: 幼少期からの強い衝動が原点にあったのですね。

飯田氏: そうですね。最近になって気づいたことですが、私は「髪を切りたい」という気持ちを非常に強く持っています。例えば三連休があったとすると、もちろん休みは嬉しいのですが、三日目には「髪を切りたい」という衝動が抑えられなくなります。これは本能に近い感覚かもしれません。ただ、特別な才能があるわけではありません。しかし、この衝動そのものが、自分にとって理容師としての個性につながっていると感じています。

理容業界への思い

バーバーなび: 理容業界全体に対して、どのような思いや考えをお持ちでしょうか。

飯田氏: 現状、業界全体で人手不足が深刻だと感じています。また、本来であれば理容師・美容師の社会的地位はもっと高く評価されるべきだと思います。この技術を習得するには最低でも3年から5年は必要です。多くの職業は5年続ければある程度の水準に達しますが、理容は全ての技術を網羅することが難しく、常に努力と工夫を重ねなければなりません。その積み重ねが世間からもっと正当に認められてほしいと考えています。

バーバーなび: 社会的地位を向上させるために、具体的に業界として取り組むべきことは何だとお考えですか。

飯田氏: 全体としては、高料金化に向かうべきだと思います。低料金での提供が続くと、どうしても「安い」というイメージが定着してしまいます。もちろん、価格に見合う技術を提供することが前提ですが、適正な価格水準が浸透すれば、働く人の賃金も上がり、自分たちが身につけた技術を安売りしないという誇りを持つことにもつながります。そうした意味でも、将来に向けて必要な取り組みだと考えています。ただし、高料金化を進める中で、お客様を単なる「回転数」で捉えるようになってしまうと本末転倒です。そのバランスをいかに保つかが非常に重要だと感じています。

髪技理容師としてのこだわり

バーバーなび: それでは、理容師としてのこだわりを教えてください。

飯田氏: お客様からいただいている限られた時間の中で、常に精一杯のサービスを提供することを意識しています。いわゆる「こなす仕事」はしたくありません。例えばマッサージであれば、決まった順番に沿って行うのではなく、本当に「今ここが効いている」と感じた部分を大切にしています。長めに行うべき箇所や力の加減を、その時のお客様の状態に合わせて変える。カットやパーマにおいても同じで、ただ作業として施すのではなく、一つひとつの動作に意味を込めて臨むことを心がけています。全てにおいて思いを込め、誠実に向き合うことが理容師としての私のこだわりです。

バーバーなび: 深いこだわりをお持ちですね。その他に、お客様との関係性において意識されていることはありますか。

飯田氏: 普段から腹式呼吸を意識しています。胸で呼吸すると呼吸が浅くなり、どうしても動作がせかせかとしたものになりやすいのですが、腹式呼吸をすると自然と動作がゆっくりとなり、お客様の呼吸も落ち着いていくのを感じます。その結果、施術の中でお客様と息が合うような感覚が生まれるのです。もちろん全ての方に完璧に合わせられるわけではありませんが、その瞬間を大切にし、お客様と呼吸を合わせることを意識しています。

お客様へのメッセージ

バーバーなび: どのようなお客様にご来店いただきたいとお考えですか。

飯田氏: 当店は、日本最高水準の衛生管理を徹底しており、本当の意味での安心と安全を掲げています。この部分に魅力を感じてくださる方は決して多くはないかもしれませんが、理容において非常に重要な要素だと考えています。実際、ご来店いただくお客様の中には、感染症リスクを理解されている医師の方も少なくありません。そのため、安心と安全を重視されるお客様には、きっとご満足いただけると考えています。

バーバーなび: 素晴らしいこだわりですね。

飯田氏: ありがとうございます。さらに、バーバーならではの「男の贅沢な時間」を楽しんでいただきたいと思っています。当サロンにお越しいただくお客様の年齢層は幅広く、20代の方から最高齢では94歳の方までいらっしゃいます。その中でも中心は40代から50代のお客様が多い傾向です。年代を問わず、技術や衛生管理にこだわりを求めて来店される方が多いと感じています。

未来の理容師に向けたメッセージ

バーバーなび: 理容師を目指す若者に向けて、メッセージをお願いいたします。

飯田氏: 理容師は接客業全般に通じる部分もありますが、とても幸せな職業だと思います。一般的な商品の製造プロセスとは異なり、私たちはお客様と相談しながら髪型を「企画」し、頭の中で設計図を描き、それを自らの手で形にしていきます。そして仕上げたものに対して「さっぱりしました、ありがとうございました」と直接喜んでいただける。この瞬間は大きなやりがいであり、この職業ならではの幸せです。ぜひ多くの若い方に理容師を目指していただきたいと思います。

バーバーなび: 理容師の魅力が伝わる素晴らしいお話ですね。一方で、若い方にとって技術習得の期間の長さが課題になるという声もありますが、その点についてはいかがでしょうか。

飯田氏: 確かに、技術の習得に3年から5年ほどかかる点は、若い世代にとってはハードルに感じられるかもしれません。そのためには、業界全体としても教育制度や環境の改革が必要だと考えています。効率的に学べる仕組みや、若手が続けやすい環境を整えることは今後ますます重要になるでしょう。しかし理容の仕事は、繰り返しの練習を通じて体に染み込ませていくものであり、その努力は避けられません。私自身が今の自分になれたのは、師匠、練習台になってくれた彼女、そして切磋琢磨した同期の存在があったからです。人とのつながりや支えを糧にしながら、お客様を喜ばせたいという強い思いを原動力に頑張ってほしいと思います。

バーバーなび: 素晴らしいメッセージをありがとうございました。

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