ILL CLIPPER 福生 本松 秀也

今回は以前バーバーなびでご紹介させていただいたINHERIT 梶原 健一さんにご紹介いただき、ILL CLIPPER 福生の本松 秀也さんを取材させていただいた。本松氏は、自身のサロンにアメリカンカルチャーを取り入れた空間づくりにこだわりを持ち、その思いについて語ってくれた。その姿勢は、お客様への妥協なき技術へのこだわりと、自らの感性を重ね合わせた独自の空間づくりにも表れている。クラシックとモダンを自在に行き来しながら、新しい価値を生み出し続ける髪技理容師だ。

CREDIT : Photo/Yuki 文/Yuki 編集/Manami(バーバーなび)

ILL CLIPPER 福生

本松 秀也

理容師歴:17年
出身校:SENDAI中央理容美容専門学校
出身地:宮城県
得意技術:カット、特殊パーマ
得意スタイル:アメリカンスタイル、外人さんがするようなスタイル
こだわり:フェードカットにおけるコントラストやグラデーション、頭の凹凸など細部への妥協しない技術提供。
趣味:スケートボード、外に出かけること

サロン紹介

まずはサロンへの道順をご案内しよう。福生駅東口を出て正面に進み、やなぎ通りを左折する。そのまま600mほど進むと右手に当サロンが見えるだろう。

店内はオールドアメリカンを彷彿とさせるゴールドリーフのサインが輝く空間だ。50s〜60sのアメリカンポップスのムードに包まれ、自然と人が集まる雰囲気に満ちている。チェッカーフロアに映えるのは、タカラベルモント製ダイヤモンドパッチ仕様の最高級バーバーチェアだ。細部にまでこだわりが宿り、本格的なアメリカンバーバーの世界観が完成している。

理容師を目指したきっかけ

バーバーなび: こんにちは。本日はよろしくお願いいたします。まずは本松さんが理容師を目指されたきっかけを教えていただけますか。

本松氏: よろしくお願いいたします。きっかけは、私は小さい頃から野球一筋で、高校を卒業する時点でも特にやりたいことがなく、進路に迷っていました。そんな時、中学時代に友人の髪を安いバリカンやハサミで切っていた姿を母が見ていて、「そういうことをしている時は楽しそうだし、手に職をつけておいた方が将来のためになると思う」と声をかけてくれたのです。それがこの業界に入る最初のきっかけでした。そこから、とりあえず専門学校に進んでみようと考えたのが始まりです。

バーバーなび: お母様の言葉が大きな後押しになったのですね。その後、地元ではなく東京に出られたのはどのような理由からでしょうか。

本松氏: 卒業と同時に上京しました。当時のトレンドの中心はやはり東京にあり、そこから全国へ広がっていく状況でした。どうせなら高い技術を身につけたいという思いが強く、東京での就職を選びました。瑞穂町にある「カットスペースシオザワ」をはじめ、複数の店舗で経験を積みましたが、今の自分にとって技術面でも経営面でも特に活きているのは、そこでの修行時代の経験だったと感じています。

理容業界への思い

バーバーなび: 理容業界全体に対して、どのような思いや考えをお持ちでしょうか。

本松氏: 業界に対しての思いとしては、この5〜6年ほどでバーバースタイル、特にフェードカットが浸透したことで、大きなカルチャーショックがあったと感じています。それまではハサミとくしを使った綺麗なカットラインや刈り上げが主流でしたが、クリッパーを使ったグラデーションが一気に広がりました。今ではフェードカットやアメリカンスタイルがベーシックなスタイルとして定着し、専門学校の授業でも扱われるほどになっています。ただ、その一方で、こうした新しいトレンドが広がっているからこそ、昔ながらの理容のルーツをしっかりと継承していくことが大切だと考えています。

バーバーなび: 古いルーツの継承ですね。具体的には、ベーシックな技術をどのように活かしていくべきだとお考えでしょうか。

本松氏: フェードなどの流行があるとしても、その基盤にはハサミとくしを使って練習を積み重ねてきたベーシックな技術があります。その基礎を崩さないという思いは常に持っています。また、最近は美容室に通っていた方が、男性ならではのサービス──例えば顔そりやマッサージ、襟足の処理など──が受けられる理容室に戻ってきている傾向も見られます。私自身も福生という異文化が入り混じる地域で店を構えているからこそ、語学力を含めた広い視野でお客様と向き合い、業界に少しでも良い変化をもたらしていけるように取り組んでいきたいと考えています。

髪技理容師としてのこだわり

バーバーなび: それでは、理容師としてのこだわりを教えてください。

本松氏: 当店のある福生市はアメリカンカルチャーが色濃く残る町なので、空間づくりにもアメリカンテイストを意識しています。私自身、ヒップホップやスケートボードといった文化が好きで、そうした要素を取り入れることで、他にはない独自の価値を生み出したいと考えています。たとえば、店内のドアノブにスケートボードを使っているのですが、「新鮮だ、はじめて見た」とお客様から好評をいただくことも多いです。固定概念に縛られるのではなく、自分が良いと思うことを形にしていく──それが私のこだわりです。

お客様へのメッセージ

バーバーなび: どのようなお客様にご来店いただきたいですか。

本松氏: まず、当店に足を運んでいただけること自体がとてもありがたいことなので、特定のお客様に限定する思いはありません。その中でも、日々のライフスタイルの中で「何か変化をしてみたい」「もっと自分をかっこよくしたい」と思っている方には、ぜひ来ていただけると嬉しいです。人種や国籍を問わず、この空間の雰囲気や自分が提供する技術の良さを感じていただければ、嬉しいです。

バーバーなび: 国際色豊かなお客様が多いと伺いました。色々な国の方にご来店いただけるのは嬉しいですね。

本松氏: そうですね。特にアメリカ人のお客様は英語しか話されない方も多いので、日本語での会話は難しいことがあります。そこで、身振り手振りを交えたコミュニケーションを取っていますが、実はその環境自体が自分の成長につながっています。インターナショナルなお客様にご来店いただくことで、私自身少しずつ英語が聞き取れるようになり、会話もできるようになってきました。また、直接海外の文化に触れられる機会にもなり、新しい知識や刺激を得られています。お客様に接しながら自分自身も成長できているというのは、本当にありがたいことだと感じています。

未来の理容師に向けたメッセージ

バーバーなび: 理容師を目指す若者に向けて、メッセージをお願いいたします。

本松氏: 今の時代は情報が溢れていますが、もし「このサロンで働きたい」と思う場所があるなら、まずは実際に足を運んで、働いている人と直接話してみるのが一番だと思います。そうすることで、情報だけでは見えなかった自分らしさや将来のビジョンが見えてくるはずです。そして、一度決めたことはぶれずに続けてほしいと思います。最初は覚えることが多く、辛いと感じる時期もありますが、それを乗り越えて継続していくと、「この仕事が楽しい」「やっていて良かった」と思える瞬間が必ず訪れます。その時こそが、この仕事を天職だと確信できる瞬間だと思うので、とにかく一歩を踏み出して続けることが大事です。

バーバーなび: 継続の大切さですね。では、専門学校時代に意識しておくと良いことはありますか。

本松氏: 専門学校時代に大切にしてほしいのは、授業後の掃除です。学校ではつい適当になりがちですが、将来自分の店を持つようになれば、空間の管理はすべて自分の責任になります。清潔な空間を保つことはお客様にとっても心地よいことなので、今のうちから習慣づけてほしいですね。あとは、なるべく多くの人とコミュニケーションを取り、幅広く学ぶこと。そしてたくさん遊んで、友達を大事にすることも忘れないでほしいです。専門学校時代に一緒に頑張った仲間との絆は、社会に出てからも大きな支えになり、困難を乗り越える力になります。

バーバーなび: 素敵なメッセージをありがとうございました。

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