THE STYLIST INTERVIEW
理容師特集
Cut inn TANAKA 田中 純平
今回は以前バーバーなびでご紹介させていただいたGNASTY by DAMDEE TOKYOの伊藤 慧さんにご紹介いただき、Cut inn TANAKAの田中 純平氏を取材した。田中氏は理容師歴19年。夫婦で数々のバーバーバトルに挑戦し、2025年11月17日に開催される「バーバーバトル トリコロール」決勝大会にも出場を控える実力者だ。業界を牽引する存在でありながら、居心地のいい空間づくりに徹し、お客様とのつながりを何より大切にされている、確かな技術と温かな人間性を併せ持つ、まさに髪技理容師だ。
Cut inn TANAKA
田中 純平
理容師歴:19年
出身校:東京理容専修学校
出身地:埼玉県
得意技術:スキンフェード
得意スタイル:クロップスタイル、パートスタイル、アイロンパーマ
こだわり:激しくなりすぎない、自然でフェードスタイルを軸とした仕上がり
趣味:釣り(ブラックバス)
サロン紹介
まずはサロンへの道順をご案内しよう。鴻巣駅西口を出て、レストラン蔵王を右手に約1.1km直進する。やがて セブン-イレブン鴻巣大間3丁目店 が見えたら、大通りを右折してさらに進む。左手に居酒屋さくら が見えたら、その向かいにある角を右折し、最初の角を左折。右手に見える茶色の建物1階、緑の屋根 が目印のサロンだ。
当サロンは、アメリカンヴィンテージを基調とした空間が魅力のバーバー。ウッド調の天井、そしてクラシックなポスターやバーバーサインが壁を彩り、まるで海外のガレージを思わせるスタイリッシュな雰囲気が漂う。黒のバーバーチェアが整然と並び、温かな照明が落ち着いた時間を演出し、理容の伝統とストリートカルチャーが融合した、地域に愛される空間だ。
理容師を目指したきっかけ
バーバーなび: こんにちは。本日はよろしくお願いいたします。まずは田中さんが理容師を目指すことになったきっかけをお聞かせください。
田中氏: よろしくお願いいたします。きっかけは両親が理容師だったという環境です。小さい頃から自然とその背中を見て育ち、気づけば後継者としての道を歩んでいました。私にとっては理容以外の選択肢はほとんどなかったので、迷うことなくこの道に進みました。学生時代に進路を考える機会がありましたが、そのときも理容師以外の選択肢はほぼありませんでした。小さい頃から自然とこの仕事を意識しながら成長してきた感覚です。
理容業界への思い
バーバーなび: 理容業界全体に対して、どのような思いや考えをお持ちですか。
田中氏: 近年、ウェブやInstagramを中心にバーバーカルチャーが広まり、バーバーショップの数も増えてきました。ただ、同じことを繰り返しているだけでは、いずれ“床屋=古い・ダサい”というイメージが再びついてしまうと思います。だからこそ、今こそ業界全体として確変のタイミングだと感じています。常に新しいことを取り入れ、時代に合った発信や進化を続けていかなければならないと考えています。
バーバーなび: なるほど。業界をさらに盛り上げるためには、どのような取り組みが必要だとお考えですか。
田中氏: 世の中には「こういうお店もある」「こういう働き方もある」ということをもっと知ってもらう必要があります。そのためにも、業界全体でInstagramやTikTokなどのSNSを活用し、発信力を強化していくことが大切だと思います。私自身もセミナーや勉強会に積極的に参加しながら、アイロンパーマの技術やスキンフェードの作り方、床屋ならではのシェービング技術などを動画で発信しています。そうすることで、「理容室ってこういう場所なんだ」「こういう仕事があるんだ」ということを多くの人に知ってもらえると感じています。
髪技理容師としてのこだわり
バーバーなび: それでは、理容師としてのこだわりを教えてください。
田中氏: 当店は固定のお客様が多く、既存の顧客様からの紹介で新しいお客様へとつながっていくケースも多いです。ですので、堅苦しくない気軽に話せる空間づくりを大切にしています。気取らず、フラッと来てパッと髪を整えて帰っていける──そんな気楽さを意識しています。
バーバーなび: お客様との距離が近く、地域に根ざしたサロンなのですね。
田中氏: そうですね。カット技術はもちろんですが、バーバーバトルやイベントへの参加にも強いこだわりがあります。自分が出場することで、お客様が喜んでくれるのが嬉しいですし、お客様から「バーバーバトルのモデルをやりたい」と声をかけられることもあります。実は私自身も、昔モデルとしてステージに立ったことがきっかけで、理容師という仕事の魅力に惹き込まれました。だからこそ、自分の活動を通じてお客様が喜んでくれたり、人生のきっかけになったりすることに大きなやりがいを感じています。仕事への姿勢や行動が、誰かの人生を前向きに変える。そんな影響を与えられる理容師でありたいと思っています。
お客様へのメッセージ
バーバーなび: どのようなお客様にお店へ来てほしいとお考えですか。
田中氏: まずは、単純に「ここは居心地がいい」と感じてもらえることが一番です。その上で、結婚式や成人式など人生の節目に、「あの時もここで髪を切ったな」と思い出してもらえるような、特別な時間を共有できるお客様に長く通っていただきたいと思っています。
バーバーなび: 実際に来店されるお客様は、どの世代の方が多いのでしょうか。
田中氏: 20代から40代のお客様が中心ですが、私が得意とする“激しすぎない、じわりとしたフェード”は、50代や60代の方にも人気が出てきています。年齢を問わず、幅広い世代の方に楽しんでいただけるスタイルですので、どなたでも気軽に足を運んでいただければと思います。初めて来てくださる方との出会いも大切にしていますし、長く通ってくださるお客様とは、お互いに成長を感じながら時間を重ねていける関係を築けたら嬉しいです。
未来の理容師に向けたメッセージ
バーバーなび: 理容師を目指す若者に向けて、メッセージをお願いします。
田中氏: 今はSNSやYouTubeなどで、流行のスタイルや技術が簡単に学べる時代です。やろうと思えば、いくらでも練習できます。ただその一方で、どうしても「流行っているもの」ばかりを追いかけがちになってしまう傾向もあります。でも、バーバーといっても、根本には“理容師としてのベース”があります。最初のきっかけが「かっこいい」「流行っている」で構いませんが、ハサミの使い方やグロー(基礎)といった、もっと根本的な部分をしっかり掘り下げて学んでほしい。僕自身も、そうした基礎の大切さを伝えていける理容師でありたいと思っています。
バーバーなび: 基礎の大切さ、そしてその奥深さを知ってほしいということですね。学生時代に意識しておくと良いことはありますか。
田中氏: 入口は「バーバーになりたい」でいいと思います。でもその先にある奥深さを知って「面白い」と感じてもらえたら、昔ながらの技術も今の若い世代に受け継がれていくはずですし、そこからまた、新しいバーバーや理容師の形が生まれていくと思います。あとは、学生のうちから、セミナーやバトル、コンテストなどに足を運んでみてほしいです。僕たちもそういったイベントを企画していますし、最初は行きづらいと感じるかもしれませんが、実際に参加してみると、仲間ができたり、新しい発見があったりと、必ず刺激になります。そうやって自分から動いて情報を取りに行く姿勢が、将来の大きな力になると思います。
バーバーなび: 素敵なメッセージをありがとうございました。