ヘアーサロンおざわ 上運天 彦志

今回は、フリー理容師の佐々木綾菜さんのご紹介で「ヘアーサロンおざわ」へ伺った。代表の小澤氏から「勢いがあり、熱量を持って成長している若手スタイリストがいる」と事前に伺っており、その人物こそが今回取材させていただいた上運天 彦志さんだ。取材を通して感じたのは、技術力だけでなく、学ぶ姿勢や仕事への真摯な向き合い方が際立っているという点である。周囲からの信頼を集める理由も自然と理解できる、将来が楽しみな若手理容師だ。


CREDIT : Photo/Yuki 文/Yuki 編集/Manami(バーバーなび)

ヘアーサロンおざわ

上運天 彦志

理容師歴:2年
出身校:国際文化理容美容専門学校
出身地:沖縄県
得意技術:カット全般・ツイスト・ハリガネ・ドレッド
得意スタイル:テーパーフェードスタイル
こだわり:丁寧にカットして土台を整えること
趣味:髪を切ること

サロン紹介

まずはサロンへの道順をご案内しよう。鶴見駅西口を出て正面の通りを直進し、突き当たりの通りを信号を渡らずに右折する。150メートルほど進むと右手に当サロンが見えるだろう。昔ながらのバーバーショップの空気を色濃く残した佇まいからは、落ち着いたブラウンの外壁にクラシックなサインポールが映え、通りゆく人の視線を自然と引き寄せる存在感がある。

当サロンは、大きなガラス面から店内のにぎわいがほどよく透け、ポマードなどこだわりの整髪料のコレクションが並べられ、男性ならワクワクするようなところも当サロンならではの魅力である。白タイルの壁面にバーバーチェアが並び、昔ながらの理容室の温もりもあいまって施術前の緊張を静かにほどいてくれるだろう。

理容師を目指したきっかけ

バーバーなび:こんにちは。本日はよろしくお願いします。まず、理容師を志すことになったきっかけについてお聞かせください。

上運天氏:よろしくお願いします。幼少期は大阪で過ごしていたのですが、母が美容師だったこともあり、日常の延長線上に自然と美容の世界がありました。保育園の帰りに母の職場で時間を過ごすことも多く、幼い頃からヘアスタイルに触れて育ったことで、美容業界に興味を持つようになりました。「将来は自分も美容師になりたい」と思っていたほどで、エクステや編み込み、パーマなど、髪を使った表現を楽しんでいた記憶が残っています。

バーバーなび:幼少期の環境が、今の進路を形づくる原点になっているのですね。では、美容ではなく理容師の道を選ばれた理由をお聞かせください。

上運天氏:高校1年生の頃に初めてフェードカットを体験したことが大きなきっかけでした。そのスタイルに強い魅力を感じ、理容の世界に惹かれました。美容はトレンドの変化が早く、年齢を重ねるにつれて方向転換を考える方も多い印象があります。一方で理容は、年齢を重ねるほど技術と経験が価値として積み上がり、「かっこよさ」に変わっていく仕事だと感じました。特に、刈り上げをつくる姿勢や、直バサミで形を整えていく所作には、職人としての美しさがあります。技術を磨き続けながら長く現役でいられる——その点に惹かれ、理容師という道を選びました。

理容業界への思い

バーバーなび:理容業界全体に対して、どのような思いや考えをお持ちですか。

上運天氏:理容師を志す人がもっと増えて、業界がさらに活性化してほしいと感じています。近年はメンズヘアに特化したサロンも増えていますが、理容が長い歴史の中で培ってきたフェードカットには独自の技術があります。特に、刈り上げの面の美しさや角の処理などは、理容師ならではの感覚と経験が求められる部分だと考えています。

バーバーなび:理容ならではの強みをどう活かしていくかが重要だということですね。今後、業界全体として取り組むべき課題についてはどうお考えでしょうか。

上運天氏:理容師が担ってきた「顔まわりのケア」を、もう一つの柱として確立していくべきだと思っています。シェービングや眉デザインは印象を大きく変えることができ、理容の技術が最も活きる領域です。また、若い世代にはまだ「理容室は年配の男性が行く場所」というイメージが残っています。この固定観念を変え、理容の高度なカット技術とトータルケアの価値をしっかり伝えていくことで、若いお客様にもより身近な存在になれると考えています。

髪技理容師としてのこだわり

バーバーなび:それでは、理容師として大切にされているこだわりについて教えてください。

上運天氏:私が一番こだわっているのは、カットを丁寧に行うことです。ヘアスタイルの土台となるカットは、仕上がりの印象だけでなく、伸びていく過程にも影響します。そのため、時間をかけて細部まで作り込むことを大切にしています。現場によってはチェックカットが十分に行われないこともありますが、私は横・縦の両方向から髪を取り、切り残しが出ないよう徹底して確認します。

バーバーなび:チェックカットをそこまで徹底されるのは、どのような理由からなのでしょうか。

上運天氏:切り残しがあると、伸びてきた際にその部分だけ長さが目立ち、スタイル全体が崩れてしまいます。また、髪を必要以上にすきすぎないことにも注意しています。すきすぎると、セットをしていない時にボリュームが不自然になったり、ダメージが際立ちやすくなったり、パーマをかけたいときに支障が出る場合もあります。お客様一人ひとりの髪質やダメージの状態を丁寧に見極め、ハサミで細かく調整を重ねることで、「伸びても形が崩れにくい」「扱いやすい状態が続く」ヘアスタイルに仕上げることができます。こうした細部へのこだわりこそ、理容師としての技術と誠意が表れる部分だと考えています。

お客様へのメッセージ

バーバーなび:どのようなお客様に来てほしいと考えていますか。

上運天氏:海外スタイルが好きな方には、ぜひご来店いただきたいと思っています。海外の柔らかい質感や抜け感のあるシルエットに憧れる方は多いですが、そうしたスタイルをつくることにやりがいを感じますし、難易度の高いデザインにも積極的に挑戦していきたいと考えています。
日本人は黒く硬い髪質の方が多いものの、技術や工夫を積み重ねることで、外国人風の柔らかい質感に近づけることができます。

バーバーなび:技術だけでなく、スタイリングの提案にもこだわりがありそうですね。

上運天氏:はい。スタイリング剤の選び方は非常に重要だと考えています。たとえば黒髪に濡れ感を強く出しすぎると、かえって質感が硬く見えてしまうことがあります。柔らかい印象に仕上げたい場合は、パウダー系やマット系のスタイリング剤を選び、毛先が自然に動くように調整します。特にマットポマードは、細く柔らかい髪質の方や、明るめのカラーをされている方と相性が良いと感じています。ご提案の際は、仕上がりの質感だけでなく、香りや使用感までお客様と一緒に確認しながら選びます。その方が日常の中で無理なく再現できるスタイルをつくること——そこに理容師としての役割があると考えています。

未来の理容師に向けたメッセージ

バーバーなび:理容師を目指す若い方々に向けて、メッセージをお願いできますか。

上運天氏:理容師を志すのであれば、学生のうちからできるだけ多く友人のカットに取り組むことをおすすめします。私は高校2年生の頃から公園で友人の髪を切り続けていたことで、現場に入ってから早い段階でカットを任せてもらえるようになりました。早く始めることには大きな意味がありますし、専門学校ではクラスメイト同士でトレンドや技術について話す機会も多いので、その期間にできるスタイルの幅を広げておくことが重要だと感じています。

バーバーなび:実践の積み重ねが大きな経験につながるということですね。情報収集の面で、意識しておくべき点はありますか。

上運天氏:はい。授業やサロン練習だけでなく、とにかく数をこなすことが大切です。経験を重ねることでカットのスピードが上がり、髪の流れや構造を感覚的に理解できるようになります。また、情報収集に関しては、日本のスタイルだけを見るのではなく、海外のスタイルも意識的に取り入れてほしいと思います。海外で流行したスタイルがSNSを通じて日本に入ってくることが多く、海外バーバーの投稿を見ることでテーパーフェードなどの新しいトレンドを先取りすることができます。現在はTikTokやPinterestなどで海外のバーバーの技術やスタイルを簡単に見られる環境があります。そうした情報を積極的に吸収し、自分の技術に落とし込んでいく姿勢が重要だと思います。

バーバーなび:貴重なお話をありがとうございました。

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