THE STYLIST INTERVIEW
理容師特集
理容室ウイング 森 和彦
今回は世田谷周辺で理容室をリサーチしていたところ、理容室ウイングさんを見つけ、取材を申し込むと森 和彦さんが応じてくださった。森氏は、得意とするショートスタイルにおいて、セットをしなくても自然にまとまる扱いやすさを追求している。理容師という仕事に大きな可能性と夢を見いだし、業界の未来を見据える情熱的な髪技理容師だ。
CREDIT : Photo/Yuki 文/Yuki 編集/Manami(バーバーなび)
理容室ウイング
森 和彦
理容師歴:36年
出身校:横浜理容美容高等学校
出身地:横浜(神奈川県)
得意技術:カット
得意スタイル:ショートスタイル(ショートヘア)
こだわり:何もしなくてもまとまるスタイル
趣味:旅とドライブ、温泉巡り
サロン紹介
まずはサロンへの道順を案内しよう。桜新町駅北口を出てファミリーマートのある方へ直進する。およそ4分ほど歩けば、右手にバーバーポールが見えてくる。そこが目的のサロンだ。
当サロンは、明るいウッドフロアと温かみのある照明に包まれた落ち着いた空間だ。ブースごとに仕切られた半個室には、ゆったりと座れる理容椅子を配置。オレンジやブラウンのレザーが映える椅子は、高級感と安心感を兼ね備え、心からリラックスできる雰囲気を演出している。プライベート性の高いスタイルで、周囲を気にせず自分だけの時間を過ごせるのが大きな特徴だ。
理容師を目指したきっかけ
バーバーなび:こんにちは。本日はよろしくお願いします。まずは、森さんが理容師を目指すきっかけを教えてください。
森氏:よろしくお願いします。小さい頃に母の髪をセットするのが好きだったことが一つのきっかけです。料理も好きでしたが、とにかく勉強が嫌いで、勉強はしたくないという思いが強かったのも理由の一つです。
バーバーなび:ありがとうございます。お母様の影響があったのですね。
森氏:そうですね。あとは、通っていた近所の理容室に非常に技術の高い理容師の方がいて、その方に憧れたのも大きな要因です。「こんな人になりたい」と思うようになりました。当初は調理師の道も考えましたが、自分には理容の方が合っていると感じ、最終的に理容を選んだという経緯があります。
理容業界への思い
バーバーなび:理容業界全体に対して、どのような思いや考えをお持ちですか。
森氏:私自身、この業界に入って子ども4人を育て上げることができました。それを実現できたのは、理容という業種が持つ力の大きさによるものだと感じています。理容業界は、夢も未来もある素晴らしい業界だと心から思います。自分の努力次第で、いくらでも可能性を広げられる職業です。
バーバーなび:素敵ですね。今、業界全体に対して課題と感じていることはありますか。
森氏:ありがとうございます。大きなことやかっこいいことは言えませんが、現在、理容はやや人気のない業界という印象を持たれているかもしれません。しかし本来は非常に魅力的な業界であり、お客様に喜びを与えると同時に、私たち自身も喜びを得られる仕事です。だからこそ、今後は理容業界をより多くの人に知ってもらい、お客様や働くスタッフが自然と集まる場所になってほしいと考えています。日常の中で気軽に立ち寄れてリラックスできる、なくなったら困るようなお店──町の定食屋のような存在を目指したいと思っています。華やかなフレンチレストランではなく、生活に根ざした場所として、地域に必要とされる理容室でありたいのです。
髪技理容師としてのこだわり
バーバーなび:それでは理容師としてのこだわりを教えてください。
森氏:空間づくりにこだわっていて、肩肘張らずリラックスして来店できる雰囲気と接客を大切にしています。お客様には、本当にふらりと立ち寄れるようなアットホームな空間を提供したいと考えています。そして、「やっぱりここじゃないと」と思っていただき、地域に根ざして長く続けていける、「なくなると困る」と言ってもらえるようなお店を作りたいと思っています。スタッフが減ってしまったことで、以前に比べると予約が取りづらくなってしまいましたが、それでも「ここじゃないと」と言っていただけるお客様には本当に感謝していますし、その言葉を励みにこれからも一人ひとりに寄り添いながら、お店を続けていきたいと思っています。
お客様へのメッセージ
バーバーなび:どのようなお客様にお店に来てほしいですか。
森氏:日々の生活に一生懸命取り組んでいる方々、頑張っている人、これから頑張ろうとしている人に来ていただきたいと思っています。当店は、忙しい毎日の中でひとときリラックスできる場所でありたい。大人でも子どもでも構いません。みんな頑張っている人たちが自然と集まってくれるといいなと思います。いいお客様というのは、お金を持っている人ではなく、人として素敵な方々。そうした方が集まるサロンにしていきたいと考えています。
バーバーなび:日々の頑張りを癒す場所としてサロンを求めている方に、ということですね。
森氏:はい。以前、訪問理容に伺った際、寝たきりの方や外に出られない方が、髪を切ったり髭を整えたりするだけで笑顔になり、元気を取り戻していく姿を何度も目にしました。髪を切る、顔を剃るという行為以上に、私たちは人として触れ合い、その人が次につながる元気を得られるお手伝いをしているのだと実感しました。だからこそ、頑張っている方々に来ていただき、少しでもリラックスし、明日への活力を持ち帰ってほしいと思っています。
未来の理容師に向けたメッセージ
バーバーなび:理容師を目指す若者に向けたメッセージをお願いできますか。
森氏:理容師という仕事は、自分が思い描く人生を実現できる職業だと思います。だからこそ、漠然と始めるのではなく、最初から自分の未来をしっかりと描き、大きな将来像を掲げて取り組んでほしいですね。時間があればあるほど、若ければ若いほど、その理想を現実にできる業界だと本気で思います。
バーバーなび:この業界の魅力について伝えておきたいことはありますか。
森氏:理容は生活に欠かせない、人から必要とされる仕事です。そして、自分のビジョンを持ち、努力を重ねることで、理想を実現することができるだけでなく、それ以上の自分になれる可能性を秘めています。また、私たち上の世代も、育休制度のように現代の社会環境に合わせた仕組みを積極的に取り入れ、働きやすい環境を整えていく必要があります。そうすることで、業界はさらに魅力を増し、多くの若者が集まってくれると信じています。
バーバーなび:素敵なメッセージをありがとうございました。