THE STYLIST INTERVIEW
理容師特集
ヘアサロン サンレオ 田中 和広
今回は以前バーバーなびでご紹介させていただいたヘアーサロン クレオの水上 武尊さんにご紹介いただき、ヘアサロン サンレオの田中 和広さんを取材させていただいた。田中氏は、同じミリ数でもバリカンによって仕上がりが異なることを熟知し、お客様の髪質や毛量に応じて5〜6種類のバリカンを巧みに使い分けている。そのこだわりはサロン空間にも色濃く反映され、カルチャーへの深い造詣を感じさせる。理容業界全体を盛り上げ、未来の理容師たちが憧れる存在へと導きたいという熱い思いを抱く髪技理容師だ。
CREDIT : Photo/Yuki 文/Yuki 編集/Manami(バーバーなび)
ヘアサロン サンレオ
田中 和広
理容師歴:20年
出身校:中央理美容専門学校
出身地:宮崎県
得意技術:フェード、スキンフェード
得意スタイル:クロップ、パートスタイル
こだわり:様々なバリカンの特性を把握し、お客様の髪質や密度に合わせて使い分ける緻密な技術。
趣味:レコード
サロン紹介
まずはサロンへの道順をご案内しよう。梅ヶ丘駅南口を出て、セブン‐イレブン世田谷梅ヶ丘駅前店方面へ直進する。突き当たりを左折し、三つ目の角にバーバーポールが目印の当サロンが見えてくる。
当サロンは単に髪を切る場所ではない映画に出てくるような「みんなが集まって、自由に会話できる場所」という理想を追求し、具現化されている空間。音楽、映画、漫画といった多様なカルチャーと、街の人々が気軽に立ち寄れる「寄り合い所」のような空間を提供し、店内ではレコードの販売も行っており、髪を切る目的以外でも、ふらっとレコードを見に来たり、新聞を読みに来たりと、お客様にとっての「憩いの場」や「サードプレース」としての役割も担っている場所だ。
理容師を目指したきっかけ
バーバーなび: こんにちは、本日はよろしくお願いします。まずは田中さんが理容師を目指すことになったきっかけを教えてください。
田中氏: よろしくお願いします。実家が理容業を営んでいますが、当初は継ぐつもりは全くありませんでした。大学に進学し、その後は別の職種で働いていたのですが、結婚を意識した時に「このままで本当に良いのだろうか」と、将来に対する漠然とした不安を感じるようになりました。そんな時、親から「理容師をやってみたらどうだ」と声をかけられたことをきっかけに、理容師の道に進むことを決意しました。妻と二人で将来を具体的に考えた時、理容師という選択肢が現実味を帯びてきたという経緯です。
バーバーなび: ありがとうございます。結婚を機に、ご実家の影響を受けて理容の道へ進まれたのですね。
理容業界への思い
田中氏: 実家が理容業という環境で育ったこともあり、業界全体が衰退し、若い成り手が少ない現状を間近で見てきました。最近ではアメリカのバーバーカルチャーを取り入れたお店も増え、業界全体に新しい風が吹き込んでいると感じます。その一方で、私としては誰でも気軽に立ち寄れる床屋こそが、本来のバーバーの姿だと思っています。つまり、海外のカルチャーから良い刺激を受けつつも、日本の理容が持つ日常に根付いた安心感を大切にしていきたいと考えています。
バーバーなび: 業界を盛り上げたいという強い思いが伝わってきますね。
田中氏: はい。何よりも、理容師を志す人を増やし、業界全体をさらに盛り上げていきたいという気持ちが強いです。これまでメディアでは「理容室=角刈り」といったイメージで語られたり、「髪を切りに行くのは美容室」という言葉が使われることが多くありました。しかし、いつか「髪を切るなら理容室、バーバーへ」と言われるような、誰もが憧れる業界にしていきたいです。
髪技理容師としてのこだわり
バーバーなび: それでは、理容師としてのこだわりを教えてください。
田中氏: 私の理想のバーバーは、映画に出てくるようなバーバーです。そこでは、ただ髪を切るだけでなく、新聞を読みに来たり、自由に会話を楽しんだり、音楽や映画、漫画といったカルチャーに触れたりできる「街の寄り合い所」のような空間として描かれています。実際に当店でもレコードの販売を行っており、髪を切る目的以外でも気軽に立ち寄れる、お客様にとっての「憩いの場」や「サードプレース」でありたいと考えています。
バーバーなび: とても素敵ですね。ふらっとレコードだけを買いに来られる方もいらっしゃるのでしょうか。
田中氏: はい、実際にレコードを見に来られるだけのお客様もいらっしゃいます。もっとここが、そんな風に人が集まる場所になれば嬉しいです。技術面では、特にフェードやスキンフェードを得意としています。その際にこだわっているのが、バリカンの使い分けです。同じミリ数表示のバリカンでも、メーカーによって刃の長さが異なり、さらに先端を使うか全体を使うかといった角度や使い方によって仕上がりは大きく変わります。だからこそ、お客様の髪質や密度を見極め、5〜6種類のバリカンを緻密に使い分けています。そうすることで、1mm単位のこだわりを表現し、お客様一人ひとりに最適な仕上がりを提供できると考えています。
お客様へのメッセージ
バーバーなび: どのようなお客様にお店に来て欲しいですか?
田中氏: この街に根ざしてサロンを営んでいるので、まずは地域の話題を共有できる方々に来ていただけると嬉しいです。もちろん、音楽や映画、アニメ、漫画といったカルチャーに興味を持っている方や、そうした共通の話題で一緒に盛り上がれる方々も大歓迎です。
バーバーなび: 情報交換やコミュニケーションを楽しめるお客様像なのですね。
田中氏: はい。実際にお客様から地域の美味しいお店や、今流行していることを教えていただくことも多いです。こちらが提供するだけでなく、お互いに新しい発見ができるような交流が楽しみでもあります。髪を切るだけでなく、この場所で心地よい時間を過ごし、新たなつながりや発見を持ち帰っていただけるような場でありたいと思っています。
未来の理容師に向けたメッセージ
バーバーなび: 理容師を目指す若者に向けたメッセージをお願いできますか。
田中氏: 理容師という仕事は、決して楽なことばかりではありません。技術を磨き、お客様と真剣に向き合う日々は、ときに大変なこともあります。しかしそれ以上に、お客様から直接「ありがとう」と感謝の言葉をいただける機会が非常に多い、本当にやりがいに満ちた素晴らしい仕事です。お客様の笑顔を間近で見られる瞬間は、この仕事ならではの大きな魅力だと思います。だからこそ、私たち現役の理容師が力を合わせ、未来の若者たちが「こんな風になりたい」と憧れるような、魅力的で活気ある業界を築いていくことが大切です。理容師という仕事の誇りを高め、次の世代が目を輝かせて目指せるような未来を、ぜひ一緒に作っていきましょう。
バーバーなび: 素敵なメッセージをありがとうございました。