THE STYLIST INTERVIEW
理容師特集
THE LAST BARBER 丸田 卓
今回は笹塚エリアで髪技理容師に出会うためにリサーチをしていたところ、THE LAST BARBERさんを見つけたので取材を申し込み、丸田 卓さんがインタビューを快諾してくださった。丸田氏は理容師歴30年を誇り、指先から伝わる感覚を通してお客様の思いに応え、身近な人々に喜びを届けることを使命とする髪技理容師だ。
CREDIT : Photo/Yuki 文/Yuki 編集/Manami(バーバーなび)
THE LAST BARBER
丸田 卓
理容師歴:30年
出身校:国際理容美容専門学校
出身地:長野県
得意技術:オールラウンドプレイヤー、触感技術
得意スタイル:メンズショートスタイル
こだわり:一つひとつ丁寧なサービス提供
趣味:バイク、仕事
サロン紹介
まずはサロンへの道順を案内しよう。京王線・笹塚駅北口を出て、甲州街道を右に250mほど進み、エネオスが見えたらその手前を右に曲がると、すぐに当サロンに到着する。サロン前にかけられている大きな暖簾が目印になるだろう。
サロンに入ると和モダンな大人の空間が広がっており、木製の引き戸や植物の緑がリラックスできる雰囲気が特徴的である。「最後の理髪店・理髪師」というサロン名に込められた思い・願いの通り、眠れるほどのリラクゼーションや安心して任せられる技術と空間を求めている方はぜひ一度訪れて見てはいかがだろうか。
理容師を目指したきっかけ
バーバーなび:こんにちは。本日はよろしくお願いいたします。まずは、丸田さんが理容師を目指すようになったきっかけを教えていただけますか。
丸田氏:よろしくお願いいたします。中高生の頃、私の実家は理容業ではなかったのですが、地元で仲間が集まる「たまり場」のような場所でした。いつも誰かがいるような、自分の家がそんな空間で、将来「この仲間たちとずっとわちゃわちゃやっていたいな」という気持ちが元々ありました。
バーバーなび:お仲間との関係性が原点だったのですね。そういった気持ちから理容師の道に進む際に何かきっかけがあったのでしょうか?
丸田氏:大人になってもそういった関係性でいられるにはどうしたらいいかと考えた時、人が集まれる場所を持つことだろうと。居酒屋やレストランをやって人が来てくれるのもいいなと思いましたし、あるいはバーバーで友人やその子供を連れて訪ねてきてくれるような、何か「場所」を提供できることが自分のやりたいことだと気づいたんです。その中で、理容師をやってみようと思ってこの仕事を選びました。
バーバーなび:そうだったのですね。上京することも視野にあったのですか?
丸田氏:最初は東京で勉強して、地元に帰ろうと思っていました。もちろん、地元の仲間とわちゃわちゃするのが目的でしたからね。ただ、学校にいるうちに現実に気づくわけです。「理容師免許を取るだけでは、まだスタートラインに立ったばかり、まだ何もできないでしょ」と。それで帰ってしまっては意味がないと思い、どうせやるなら、一流の理容師になって帰った方がいいという結論に至りまして。
バーバーなび:独立する前の修行先はいくつか経験されたのですか?
丸田氏:はい、2店舗で修行をしてきました。最初の師匠のサロンで6年間修行し、その後、独立するか、もう1店舗行くか、海外留学するか、いくつか選択肢がありました。その中で、たまたま2店舗目の師匠と出会う機会があり、「1店舗だけでは分からないこともあるだろうし、技術のこと以外に経営のことも学びながら3年ぐらい頑張ってみないか」というお話をいただきました。
バーバーなび:その出会いから、2店舗目で修行されることになったのですね。
丸田氏:はい、3年という予定がなぜかそこで17年お世話になることになりましたね。そして、2019年にこのお店を出す形になりました。
理容業界への思い
バーバーなび: 理容業界全体について、どのようにお考えですか。
丸田氏: 若い頃は、真面目で一生懸命な人が多い業界だからこそ、もっと社会的に評価されてもいいはずだと考えていました。今でもその思いはありますが、考え方は少し変わってきています。
バーバーなび: どのように変わったのでしょうか。
丸田氏: 今は、理容師でも美容師でも、それぞれが関わる人を幸せにできればそれで十分だと思っています。業界全体をどうにかしようとするよりも、妻や家族、お客様、ディーラーさんなど、自分の半径10メートルにいる人たちが少しでも幸せになればいい。その気持ちは必ず伝わって広がっていくと信じています。
バーバーなび: とても素敵なお考えですね。
丸田氏:ありがとうございます。「いい気持ち・幸せ・喜び」が半径10mからまた次の方へと伝播していく。それで、いやそれが良いのだと思います。
髪技理容師としてのこだわり
バーバーなび: それでは、こだわりについて教えてください。
丸田氏: 当店は女性のお客様が15%ほどで、残りは男性のお客様です。ご来店くださる大人の方々にとって、家庭や職場とは違う「第三の居場所」にしたいと考えています。社会的な地位やプライドを気にせず、カッコつけずに過ごせる、自分らしくいられる場所を提供したいと思っています。
バーバーなび: お客様にとって、心からリラックスできる空間なのですね。
丸田氏: そうですね。私自身が「ここに行きたい、ここにいたい」と思える店づくりを心がけています。ありがたいことに、30年来、20年以上通ってくださるお客様もいらっしゃり、「丸田さんのところに来ているんだよ」と言っていただけるのが何より嬉しいです。内装や設備ももちろん大切ですが、最終的には「人」が一番重要だと考えています。心地よい空間は滞在をより豊かにする付加価値になると思っています。飲食店でも、スピードを重視したチェーンを選ぶ方もいれば、ゆっくり落ち着けるお店を選ぶ方もいます。理容室も同じで、お客様が求めるものはそれぞれです。だからこそ、すべてのお客様に来ていただきたいとは思っていません。当店を好んで通っていただき、末長く髪を任せていただけることほど嬉しいことはありません。
お客様へのメッセージ
バーバーなび: どのようなお客様にお店に来てほしいですか。
丸田氏: 「床屋なんて、髪が短くなればいいだけだ」と思っている方に、バーバーの本当の良さをもっと知ってほしいという気持ちがあります。シャンプーや顔剃り一つ取っても、心から感動した経験がない方は多いのではないでしょうか。
バーバーなび: なるほど。その感動を体験してほしいということですね。
丸田氏: はい、それを私なら提供できると思っています。当サロンは、お客様の95%以上が常連の方で、新規のお客様を積極的に募集しているわけではありません。ただ、「床屋なんてどこも変わらない」と思っている方に「いや、違うんだ」と感じていただけるのはとても嬉しいです。そして、私たちと共に年齢を重ね、「一生、あなたに髪を任せたい」と言っていただけるような、お互いにリスペクトを持てる方と長くお付き合いしていきたいと思っています。お客様にとっての「ラストバーバー」になれるような存在でありたいですね。
未来の理容師に向けたメッセージ
バーバーなび: 理容師を目指す若者に向けたメッセージをお願いできますか。
丸田氏: 理容師は、楽しいし、人を幸せにできる素晴らしい仕事です。ぜひ胸を張って、自信を持って目指してほしいと思います。ただ、その上で最も伝えたいのは、土台(基礎)が非常に大事で、しっかりしていなければならないということです。
バーバーなび: やはり技術の習得が何よりも基本なのですね。
丸田氏: そうですね。美容師にも共通して言えることですが、技術がなければサロンを続けることはできません。特に最初の10年間は、他のことをすべて犠牲にしてでも、仕事に必死に、真摯に向き合ってほしいです。この期間にしっかりと基礎を築けば、その後に新しい技術が出てきてもブレずに対応できるようになります。また、技術だけでなく、学び続けることも非常に重要です。本を読むこと(ビジネス書でも小説でも漫画でも)は、自分の人間力を高め、コミュニケーションの幅を広げるために不可欠です。最近は要約動画などもありますが、それだけでは十分ではありません。読書を通じて語彙力を磨き、それが接客にも生きてくるのです。だからこそ、読書の大切さを強調したいと思います。技術の向上と人間性の育成は両輪です。様々な人との出会いや経験を通じて自分の人生を広げることが、最終的にお客様に喜んでいただける理容師になることにつながると考えています。
バーバーなび: 素敵なメッセージをありがとうございました。