THE STYLIST INTERVIEW
理容師特集
Chou Chou KAWAGOE 川越 剛
今回は東京のシンボルとも言えるスカイツリーの存在感が際立つ街、墨田区錦糸町にあるChou Chou KAWAGOEのオーナー川越氏のインタビューに伺った。父の影響で理容の道へ進み、現在はコーチングスタッフや講師としても活躍の場を広げる川越氏。自身の経験を活かし、次世代の育成を通して理容業界に新たな風をもたらす川越氏にスポットを当ててみた。
Chou Chou KAWAGOE
川越 剛
理容師歴:27年
出身校:東京理容専修学校
出身地:東京都
得意技術:パーマ・カット
得意スタイル:エアリースタイル
こだわり:セットレスでも綺麗に見える仕上がり
趣味:映画鑑賞・アンティーク集め
サロン紹介
まずはサロンへの道順を説明しよう。錦糸町駅北口を降りると信号をアイレントホーム側へ渡る。そのまま直進して立志舎前の信号を左折、直進しすぐにウキウキコーヒーが見えるのでこちらを右折、美容院ALI’l BY gulgulnoの角を左折でカフェ風ヘアサロン ChouChou KAWAGOEへ辿り着くだろう。
店内に入ると、本店同様に映像が流れている大きなプロジェクターが出迎えてくれる。内観の白いタイルがとても爽やかで印象的だ。また、お香の良い香りにも包まれ、リラックスして施術を受けられる空間がしっかりと整えられているのだ。 お店の簡単な紹介が済んだところで早速、斉藤氏のインタビューを進めていくとしよう。
理容師を目指したきっかけ
バーバーなび:こんにちは、本日はよろしくお願いします。まず川越さんが理容師を目指すことになったきっかけを教えてください。
川越氏:よろしくお願いします。理容師を目指すようになったきっかけは、理容師だった父の影響が大きいです。物心ついた頃から父が僕を絶対的に理容師の道へという考えの人で、理容に対して特にネガティブな印象もなかったし、否定する理由も見つからなかったので。あとは僕自身、勉強したくないって思っていたこともあって自然とその道に進んだ感じです。
バーバーなび:はじめはお父様の影響があったのですね。
川越氏:そうですね。好きとか嫌いではなく成り行きです。専門学校に入学してからもどこか冷静で、部活みたいに何年か耐えればくらいの感覚だったし、学生時代や就職した時もそうでしたが、同期が「俺はこんなにできるんだ」って言い合っている中、自分は一番下手だくらいに思っていましたからね。なので、最初は本当深いこと何も考えずに理容の道に進んだという形でした。
理容業界への思い
バーバーなび:理容業界全体に対してはどのような思いや考えをお持ちですか?
川越氏:若い世代に理容のバトンを繋ぎたいです。きっと今の若い人の持つ理容のイメージって、昔の床屋みたいにどこか堅苦しくて、苦労が多いものってイメージだと思うんです。その一方で美容は華やかで、テレビでも憧れの職業として取り上げられている。だから、多くの若者は美容の道に進んでしまう。でも、そういった理容の負のイメージを変えていって、次の世代に理容の魅力を伝えていきたいなって思います。
バーバーなび:理容の魅力は今後も発信していきたいですね。数多くのコンテスト受賞歴がありますが、やはりコンテストもポイントの一つでしょうか?
川越氏:僕はこれまで様々なコンテストに出て、受賞もさせていただきましたが、最初は賞に入らなくても、正直プライドも何も深く感じないで負けても特に何も思わなかったんです。ただ、コンテスト会場で父親と知人の会話で成績をうやむやにした内容をふと聞いたことをきっかけに、悔しい気持ちから自身の中で30歳までに言い訳一切ナシで死ぬ気でやってみよう!という気持ちで打ち込んだことがこの受賞歴に繋がったのかもしれません。
とはいえコンテストが全てだとは思っていません。結果が自信に繋がるのは確かですが、技術を評価するのは結局お客様だからです。例えば、決して綺麗な人がいるわけではない、おじさんが営む居酒屋なのに何故かいつもお客さんはいっぱいな居酒屋。理由は結局みんなおじさんの料理が食べたくて来ているんですよね。理容もそんな感じで、自分の好きなものを並べて、僕のスタイルを好きだと思った人が来てくれるから、選ぶのはやはりお客様。
講習や業界の人と会う時には自分が学ぶ姿勢で若い人たちからも技術や情報を吸収したいと思っています。また、状況により、若い理容師との会話で褒めることもありますし、そういったところで自信を付けてもらう。僕たち世代がいつまでも生意気に見られてしまうのは良くないし、若い世代にバトンを渡していくことも必要だと思っています。
髪技理容師としてのこだわり
バーバーなび:ありがとうございます。それではこだわりを教えてください。
川越氏:正直、こだわりはあまりないけど、抽象的に言えば自分の得意なことに関しては「自分が一番上手い」という気持ちでやるべきだと思っています。僕のスタイルは、接客面でのクオリティよりも仕事の部分のクオリティだと思っていて、パーマやカットの技術には絶対的な自信があります。自分で今の時代のスタイルを試してみることもあるし、常に自主練を怠らないことが大事だと考えています。お店として仕事をしている以上、お金を頂くのであれば、やっぱり一定のクオリティを保っていかないと、自分が納得できないです。
バーバーなび:川越さんはコンテストのコーチとしても活動されていますが、コーチとしての思いやこだわりがあれば教えていただけますか。
川越氏:もちろん選手は上手くなりたい優勝したいって言うじゃないですか。だから選手には上手くなれるようもちろん指導します、プロセスよりも結果だから。でも今の時代、昔の根性任せみたいな全員に同じことをやらせるのではなく、一人一人を子供のようにしっかりみて指導することが重要だと感じています。初見の相手を見ただけでは何もわからないけど、まずは褒めることからはじめ、その子の集合時間に対する感覚だったり、はじめての挨拶だったり仕草だったり、話している顔つき、細かなところだけどそんなところを見て性格を見極めていってその子にあった舵の切り方で指導やアドバイスをします。正直大会との相性もあるけど、学びに来ている以上、ある程度適度な宿題を出したりもするし、個人個人の向き合い方が重要ですね。
バーバーなび:そういった部分を含めて個々を見極め、判断して指導されてるんですね。ありがとうございます。
お客様へのメッセージ
バーバーなび:どのようなお客様にお店に来て欲しいですか?
川越氏:一番は僕のスタイルを気に入っていただける方に来ていただきたいです。お店側から誰でも来てくださいってお願いするスタンスではなく、安さを求めるお客様ではなく、僕の技術を評価してくれる方に来てほしいです。僕の技術に期待してくれるお客様には、リスペクトの気持ちを持って接客しているし、実際そのようなお客様が残ってくれている形ではあります。
バーバーなび:信頼してきていただけるお客様に対して、リスペクトの気持ちを持って技術で応えているのですね。
川越氏:そうですね。なので、お客様に認められ「この人にやってもらいたい」と思っていただくことが大切だと感じています。まずは自身の技術に自信を持つことで、お客様との信頼関係が相乗効果で高まっていくのではないかと思いますし、そこで僕自身の価値を感じています。変な話ですが、調子が悪くても眠たくても「やってくれてありがとう」と思ってもらえるお客様との関係性がとても楽なんです。そうした関係に持っていけることが、一番良いのではないかと思います。
未来の理容師に向けたメッセージ
バーバーなび:理容師を目指す若者に向けたメッセージもお願いできますか?
川越氏:今でこそ会社勤めの方だと、早期退職とかノー残業とか働き方が変わってきていると思うんです。だけどこの理容って仕事は、はじめからいつまで働くかも決められるし、休みだって自由に決められて好きなことへ突き進める仕事です。初見で感じた理容の楽しい部分を続けて、それを得意なことにしたら良いと伝えたいです。理容はそれが結果としてスキルになってお金になる仕事だから、とにかく好きなこと、得意なことを見つけるってこと。僕は実際この業界に入ってから、何人もの挫折して辞めていく人を見てきて思うことがあります。それは結局、僕は運が良かったってこと。全員が全員成功する仕事じゃないけど、僕は最初の3年間が1番の肝なんじゃないかなと思っています。学校とは違ってタフにならないといけないから、人と比べる隙のないくらい夢中になるくらいがちょうどいいです。周りから厳しいことを言われても、下積み時代の知らないうちにした努力が自分でお店を出す未来に繋がっていたと感じています。「俺はこれが好きなんだ」って多少鈍感になっているくらいがちょうどいいんです。逆に言えば、頭のいい人の方が、周りの声を聞いて色々考え込んで辞めていく世界です。バカになっているくらいがいい。たとえ停滞する時期が来ても僕の周りのいい感じになっている人って、「やばい」と思いながらも、その後グッと成長していくものです。ただ一つ、自分に自信を持っていることが強みになります。
バーバーなび:川越さんの経験からの貴重なメッセージをありがとうございます。