髪技理容師を探せ Vol.316 -ヘアースタジオプレジャー 吉田 昌生

今回は練馬エリアで日本のTHE 床屋をリサーチしていたところ、ヘアースタジオ プレジャーの吉田 昌生さんに取材を受けていただけることになり、さっそくサロンへ足を運んだ。理容師歴36年の吉田氏は、地域の方々に支えられながら仕事をさせてもらっているという思いを大切にしており、その想いは心温まるエピソードを通じて強く伝わり、多くの人に愛される髪技理容師として親しまれている。

Profile

Masao Yoshida (吉田 昌生)

ヘアースタジオプレジャー

理容師歴:36年
出身校:窪田理容美容専門学校
出身地:東京都
得意技術:刈り上げ・ブロース
得意スタイル:フェードスタイル・アイロンパーマ
こだわり:お客様の理想にできるだけ近づけたスタイルの提供・再現性の高い仕上がり
趣味:ゴルフ・サーフィン

ヘアースタジオプレジャー について

まずはサロンへの道順を案内しよう。地下鉄赤塚駅2番出口を出て直進し、ファミリーマート田柄二丁目店を通り過ぎて豊島園通りへ向かう。光が丘警察署田柄交番を通過し、2つ目の角を左折すると、左手にバーバーポールとピンクの外壁が目印のサロンに到着することができる。

店内にはバーバーチェアが3台並び、清潔感あふれる空間が広がっている。昔ながらの床屋の良さをしっかりと残しつつ、地域に密着した親しみやすい雰囲気が漂い、老若男女問わず多くの人々に愛されているサロンだ。遠方からわざわざ足を運ぶお客様も多く、その人気の理由が感じ取れる。

お店の簡単な紹介が済んだところで早速、吉田氏のインタビューを進めていこう。

ヘアースタジオプレジャー 吉田 昌生

理容師を目指したきっかけ

バーバーなび:こんにちは。本日はよろしくお願いします。まずは、吉田さんが理容師を目指すことになったきっかけを教えてください。

吉田氏:高校時代はあまり勉強に熱心ではなく、高校三年生のとき、先生から「このままだと卒業も難しいぞ」と言われました。そんなとき、学校には「一人一研究」という制度があり、何か一つのテーマを調べて作文などにまとめて提出すれば、卒業のチャンスがあると教えてもらいました。当時、心霊やオカルトが流行していて、私自身も興味があったため、それをテーマに研究し、無事に卒業することができました。つまり、もともと理容に特別な興味があったわけではなかったんです。

しかし、卒業後の進路を考えたとき、一番身近にあったのが父の営む理容室でした。父は長年、理容師としての姿を見せてくれていましたし、理容組合の知り合いに推薦状を書いてもらう話もありましたが、父が「続くかどうかわからないから」と断ってしまいました。そこで、自力で中央理美容専門学校の試験を受けたものの、不合格。そんなとき、偶然知り合った方から、母の母校でもある窪田理容美容専門学校で三次募集が行われていると聞き、「一緒に受験してみないか」と誘われました。試験を受けたところ無事に合格し、素晴らしいクラスメイトにも恵まれ、無事に卒業することができました。

バーバーなび: 専門学校卒業後の進路については、どのように考えましたか?

実家に父の理容室があり、学校にも多くの求人があったため、どの道を選ぶべきか悩みました。しかし、父から「仕事にきちんと向き合うために、実家ではなく他の場所で修行したほうがいい」と勧められました。その言葉が大きな後押しとなり、最終的に新たな環境で修行を積むことを決意しました。

バーバーなび:理容以外の職業を考えたことはありましたか?

吉田氏:正直、遊びたい気持ちも強かったので、アルバイトで理容以外の仕事も経験しました。その中で、一時は料理人という選択肢も考えました。しかし、厨房での仕事を任されるようになると、土日のシフトに入ることが必須となり、「遊ぶ時間がなくなる」と思って辞めてしまいました。その様子を見ていた父は、「理容も続かないだろう」と思っていたかもしれません。もし実家で修行していたら、甘えが出てしまい、きちんとした理容師になれなかったのではないかと思います。

バーバーなび: 修行先ではどのような経験をされましたか?

吉田氏:修行先のオーナーには、とても恵まれました。見た目はいかつい方でしたが、誰よりも早くサロンに来て営業準備をする方でした。「新人だから早く来るべき」と押し付けるのではなく、「寝坊すると準備がバタバタしてしまうから、早く来たほうがいい」と、自ら行動で示してくれる方でした。本当に良い環境で学ぶことができたと思いますし、他の修行仲間からも「いい修行先に出会えたね」と言われることが多かったので、心から感謝しています。

バーバーなび:そういった経緯があったんですね。貴重なお話をありがとうございます。

理容業界への思い

バーバーなび:理容業界全体に対してどのような思いや考えをお持ちですか?

吉田氏:修行時代から、理容と美容の料金面での格差を感じていました。どちらも修行を経て技術を磨いているにもかかわらず、料金設定に倍ほどの差があるケースもあり、疑問を抱くこともありました。業界全体で「これ以下の料金ではカットしない」といった基準を組合が示してくれれば、理容師の仕事に対する意欲も高まり、より良い技術を提供できる環境が整うのではないかと思います。サロン同士が価格競争で消耗するのではなく、付加価値のある技術を提供し、お客様に納得していただける料金体系を築くことが、これからの理容業界には必要だと感じます。そもそも、理容の「総合調髪」はカット・顔剃り・シャンプーをセットにした価格設定が基本であり、それが美容との料金差を生む一因だったと思います。格安カットサロンに合わせるつもりはありませんが、一部の理容組合が「理容室の価格を統一し、7000円以上に引き上げるべき」と提案している意見には、一定の理解があります。

また、最近注目されている「頭浸浴」を導入することも、理容業界の価値向上に有効だと考えています。頭浸浴はリラックス効果が高く、お客様の満足度向上につながるだけでなく、施術中の時間を有効活用できる点も大きなメリットです。例えば、頭浸浴をしている間に別のお客様のカットを進めることができ、サロン全体の施術効率が向上します。さらに、お客様が「行きたい」と思ったときに気軽に来店できるサロンを目指し、ご希望の日程の前後1〜2日以内にはご案内できるよう努めています。そのためにも、予約の先延ばしを最小限に抑える工夫が求められます。また、人手不足の課題に対しても、こうした新たな施術メニューの導入など、サロンの運営スタイルを工夫することで対応していく必要があると考えています。

今後、価格改定が避けられない状況も考えられますが、その際もお客様の立場に立ち、「フルメニューだけでなく、カットだけ、シェービングだけといった選択肢を設けることで、より気軽に利用できる環境を整えたい」と考えています。理容には、美容では提供できない独自の技術やサービスがあり、その魅力をもっと多くの方に知っていただけるよう努めていきたいですね。

バーバーなび:お客様のご要望に応えるだけでなく、業界全体の未来も見据えた取り組みを考えていらっしゃるのですね。とても素敵ですね。

吉田氏:ありがとうございます。現在、高い料金を払ってまでサロンで髪を切らないという方も多いですが、一度安価な理容室に行ったものの「やっぱりこっちの方がいい」と戻ってきてくださるお客様もいらっしゃいます。そういった方々を大切にしながら、より魅力的なサロンづくりを続けていきたいと思います。

以前、朝の連続ドラマで震災後の理容師の話やシェービングのシーンが放送されていたことがありましたが、そうした場面を見て理容と美容の違いを意識する方もいるかもしれません。しかし、実際には多くの方がその違いを正しく認識していないと感じています。そのため、メディアを活用して理容業界の認知度を高めることが重要だと考えています。もし理容組合が率先して発信を強化すれば、業界全体がより積極的に動きやすくなるのではないでしょうか。今後も理容の価値を広めるために、自分自身もできる限りの発信をしていきたいと思います。

髪技理容師としてのこだわり

バーバーなび:それでは、こだわりについて教えてください。

吉田氏:うちは1人のお客様に対して1時間の予約枠を確保しています。その限られた時間の中でしっかりと要望をお伺いし、形にすることを大切にしています。例えば、「季節が暖かくなってきたので、ここを少し短くしましょう」といった細かな提案ができるよう、お客様との関係づくりにもこだわっています。最近では、昔のように「いつもの!」とオーダーする方は減っており、よりお客様に寄り添った接客を心がけています。

何より、お客様に「気持ちよかった」「来てよかった」と思っていただくことが一番大切です。例えば、毎回うちでパーマをかけているお客様がいらっしゃったとして、毛先のダメージの違いに気づけば、「セルフカラーをされているのでは?」と察することができます。そうした場合は、「ここ、少し傷んできていますね。お湯に浸かりながらトリートメントパックをすると効果的ですよ」といったアドバイスをお伝えします。もちろん、サロンでのケアをご提案することもできますが、まずは「お金をかけずにできるケア」からお伝えすることを心がけています。その上で、「しっかりケアしたい」と思われた方には、うちのメニューをご案内したり、試しやすいようにサンプルをお渡ししたりすることもあります。市販品を選ぶ場合でも、どんなものが良いかをアドバイスするようにしていますね。

バーバーなび:お客様にとって、とても親身な接客ですね。そういった積み重ねが、きっとお客様の満足度につながっているんですね。

吉田氏:特に高校生くらいの若いお客様は、セットの仕方を丁寧にお伝えすることで、次回来店時に「ここがうまくできなかった」「この部分、自分で切ってしまいました」といった相談をしてくれるようになります。そうした場合、「厚みが気になるなら、前回よりも少し軽くしておこうか」と提案したり、「もし気になるようなら、1週間以内なら無料で調整しますよ」とお伝えしたりしています。こうしたやりとりを通じて、地域の若い世代との信頼関係を少しずつ築けるのが嬉しいですね。

うちのサロンは、地域の方々の支えがあってこそ成り立っています。お客様と飲み屋でばったり会うこともあれば、「明日ゴルフに行こう」といった話が広がることもあります。こうした地域に根付いた接客こそが、他のサロンにはない強みだと思っています。これからも、お客様とのつながりを大切にしながら、サロンを続けていきたいですね。

バーバーなび:お客様との温かい関係性がとても素敵ですね。

お客様へのメッセージ

バーバーなび:どのようなお客様にお店に来て欲しいですか?

吉田氏:いつまでもおしゃれを楽しみ、こだわりを持ち続けたいと思っている方に来ていただきたいですね。特に男性は、年齢とともに髪のボリュームが気になり始めると、おしゃれへの意識が薄れてしまうことがあります。でも、髪の残し方や整え方、カラーの工夫次第で、より魅力的なスタイルを作ることができます。私たちは、ただ髪を切るだけではなく、そうした一人ひとりに合ったスタイルの提案を大切にしています。このサロンに来れば、「こんな提案をしてもらえて、もっとカッコよくなれるんだ」と感じていただけるような存在でありたいですし、そんなサロンを育てていきたいと思っています。

バーバーなび:いくつになっても、お客様が輝けるスタイル作りを大切にされているんですね。

未来の理容師に向けたメッセージ

バーバーなび:理容師を目指す若者に向けたメッセージをお願いします。

吉田氏:若い人たちには、最初の辛い時期を乗り越えて、一人前の理容師になってほしいと思います。私自身、修行を始めたばかりの頃は手荒れに悩まされました。指がパンパンに腫れるほどで、「もう辞めたい」と思うほど大変でした。でも、そんな時に先輩方が「シャンプー、代わっておくよ」「次はこれをやってみて」と、さりげなく助けてくれたことに本当に救われました。一人前になるまでは、休みが半日しか取れなかったり、手荒れ以外にも辛いことがたくさんありました。それでも、4〜5年経ち、お客様の前にしっかり立てるようになった時、その努力が「ありがとう」という言葉になって返ってきて、「本当にやっていてよかった」と心から感じました。だからこそ、お客様に喜んでもらえることが自分の喜びにつながる、この仕事の魅力をぜひ知ってほしいですね。

中には、給与が少ないうえに練習の材料費まで自己負担しなければならないサロンもあると聞きます。また、先輩との相性が合わないこともあるでしょう。そんな時は、無理に同じ店にこだわる必要はありません。辛くなったら別の店に移るのも一つの選択肢です。理容師として「絶対に一人前になりたい」という気持ちがあるなら、環境を変えて学び直すことは決して悪いことではありません。理容室はたくさんあります。自分が本当に学べる環境を見つけ、一から学び直し、自分にとって最適な場所で一人前の理容師を目指してほしいと思います。

バーバーなび:経験に裏打ちされた、とても力強いメッセージをありがとうございました。

最後に

バーバーなび:本日はお忙しい中取材のご協力いただきありがとうございました。最後に吉田さんおすすめのメニューを紹介してもらえますか?

吉田氏:はい。こちらこそありがとうございました。おすすめのメニューをご紹介します。

髪技理容師おすすめメニューアイロンパーマ ¥8,300

写真提供:ヘアースタジオプレジャー

髪技理容師おすすめメニュースキンフェード・フェードカット ¥4,800

写真提供:ヘアースタジオプレジャー

髪技理容師おすすめメニューフェードカットアイロンパーマ ¥8,300

写真提供:ヘアースタジオプレジャー

髪技理容師おすすめメニューハイブリーチ+¥4400

店舗基本情報

店舗名ヘアースタジオプレジャー
住所東京都練馬区田柄4丁目30−10
営業時間・定休日9:00~19:00
定休日:月曜日、火曜日
最寄駅沿線東東京メトロ有楽町線・副都心線
最寄駅地下鉄赤塚駅
電話番号03-3938-2098
ホームページhttps://www.instagram.com/masao_yoshida_barber/

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