THE STYLIST INTERVIEW
理容師特集
HAIR SALON Shikada 鈴木 久美子
今回は以前バーバーなびでご紹介させていただいたバーバーイシイの石井 賢一さんにご紹介いただき、HAIR SALON Shikadaの鈴木 久美子さんを取材させていただいた。鈴木氏は理容師歴13年、メンズカットからレディースシェービングまで幅広い施術を手がけ、繊細な技術を何よりも大切にしている。世代や性別を問わず、多くの顧客から信頼を集めている点も印象的だ。取材中には一部お母様である鹿田 早苗氏にもお話を伺う機会を得たので、ぜひ注目していただきたい。
CREDIT : Photo/Hummer 文/Hummer 編集/Manami(バーバーなび)

HAIR SALON Shikada
鈴木 久美子
理容師歴:13年
出身校:国際文化理容美容専門学校 国分寺校
出身地:東京都
得意技術:メンズカット
得意スタイル:自宅で簡単に仕上げることのできるスタイル
こだわり:作り込まない再現性のある仕上がりにすること
趣味:旅行・トラックトレーラー
サロン紹介

五日市線・秋川駅北口から徒歩20分。無料駐車場を5台分完備している。国道411号(滝山街道)沿い、瀬戸岡南交差点を日の出方面へ曲がると左手に見える。圏央道・日の出インター交差点からは福生方面へ進み、次の信号を右折すれば右側に位置する。ナビを使用する場合は「あきる野市瀬戸岡376-8」で検索すると確実だ。

理容室としての確かな技術に加え、男女問わず幅広いニーズに応えるメニュー構成が特長の当サロンは、カット・パーマ・カラーはもちろん、背中シェービングなどエステ要素を含む施術も行っている。店内は3つの空間に仕切られ、うち1席は完全個室仕様。半個室のプライベート空間で、周囲を気にせず施術に集中できる環境を整えている。背中の施術はエステ用ガウンに着替えて対応するなど、細部への配慮も抜かりない。
理容師を目指したきっかけ

バーバーなび:こんにちは、本日はよろしくお願いします。まず鈴木さんが理容師を目指すことになったきっかけを教えてください。
鈴木氏:よろしくお願いします。母が理容の仕事に打ち込む姿を見て育ち、「自分の技術で誰かに喜んでもらえる仕事って素敵だな」と感じていました。人の役に立ちたいという思いから、保育士を目指そうと考えた時期もありましたが、将来を見据えて進路を選ぶ中で、自分の手で技術を磨いていける理容の世界に魅力を感じ、この道に進むことを決めました。美容師と理容師のどちらに進むかは最後まで迷いましたが、剃刀を扱える理容師ならではの高度な技術に惹かれました。
バーバーなび:お母様の影響がスタートだったのですね。
鈴木氏:はい、母の背中を見て育ったことで、自然と理容の世界に興味を持つようになりました。ただ、最初から「サロンを継ごう」と決めていたわけではありません。まずは自分の力を試したくて、都心のサロンで修行を積みました。その後、国立のサロンでも経験を重ね、そこで夫と出会って結婚し、出産と育休を経て、昨年このサロンに戻ってきました。祖父母の代から母へと受け継がれてきたこの場所には、地域の方々に必要とされる技術があると感じています。そうした想いが、この街に戻ろうと思えた大きな理由です。
理容業界への思い

バーバーなび:理容業界全体に対してどのような思いや考えをお持ちですか?
鈴木氏:低価格のサロンが増える中で、「理容は稼げない仕事」と受け取られがちですが、なかにはおしゃれで技術に見合った価格帯でしっかり勝負しているサロンもあります。そういった取り組みは理容組合でも話題に上がることがあり、私自身も大切にしたいと感じています。理容業界が“絶滅危惧種”のように見られてしまうことがあるのもとても残念で、実際には世代を問わず必要とされる技術があり、感動を与えられる場面も多い仕事だと思います。お顔そりを初めて体験された方が「もう顔そりなしの生活なんて考えられない」とおっしゃる場面もあり、そういった反応に触れるたびに、この技術を守って伝えていく責任を感じるようになりました。
バーバーなび:僕自身も、お顔そりの魅力を知ってからは欠かせない存在になっています。
鹿田氏(母):「ビューティーバーバー」という造語をもっと広めていけたらと思っています。理容というと男性のための場所という印象がまだまだ強いですが、性別を問わず綺麗になれる場所として認知されるようになったら嬉しいです。ターゲットを限定せず、より多くの方に理容の魅力を届けていきたいと思います。今はまさに理容の世代交代が進んでいて、若い世代の理容師たちが新しいスタイルを築いています。そうした感性と、これまでの技術を調和させていくことが、今後の鍵になると感じています。
バーバーなび:素敵ですね。今後、取り組んでいきたいことはありますか?
鹿田氏(母):お顔そりの価値を、もっと高めていきたいと考えています。人の顔に刃物を当てられる職業は、医師と理容師だけです。それほど繊細で貴重な技術であるにもかかわらず、顔そりに対する価格のイメージが低いのは、とてももったいないと感じます。技術者として積み重ねてきた努力や専門性が、もっと正当に評価されるようになれば、理容業界全体の安定にもつながっていくと思います。
髪技理容師としてのこだわり

バーバーなび:それではこだわりを教えてください。
鈴木氏:メンズカットでは1mm単位の調整が求められるので、その繊細さや細かさにこだわっています。お顔剃りに関しても、産毛をあらゆる角度から確認し、剃り残しがないかどうか丁寧にチェックしています。お客様には気づかれないくらい細かな部分かもしれませんが、そこにこだわるのが自分の好きなポイントでもあります。女性の1cmと男性の1cmでは印象の変化が全然違っていて、特に男性の1cmは1ヶ月後のセットのしやすさや見た目の印象にも大きく関わると思うので、そこも含めて難しさと楽しさを感じています。髪型はただ整えるだけでなく、お客様が次にサロンへ来るまでの期間も快適に過ごせるかを左右する大事な要素なので、そこまで見越して技術を提供したいという思いがあります。
お客様へのメッセージ

バーバーなび:どのようなお客様にお店に来てほしいですか?
鈴木氏:もちろんこだわりのある方も歓迎ですが、自分にどんなスタイルが似合うのかわからないという方にも来ていただきたいです。むしろ、こだわりのない方がうちに来たことをきっかけに「わあ」とおしゃれに目覚めて、変わっていく姿を見るのが好きだなと感じる瞬間です。だからこそ、美に対して少し疎いと思っている方にも「変われるよ」って伝えたいですね。実際に来店されるお客様の中にも「お任せでいいよ」という方が多いので、そういった信頼関係の中で携われていることに感謝しています。
バーバーなび:お任せでと言えるのは、きっと信頼関係があるからこそですね。
鈴木氏:本当にありがたいことです。お客様の中にはビジネスマンの方もいらっしゃいますが、専門職の方など、ヘアスタイルに遊び心を持ってくれる方が多いんですよね。得意な年代としては私の年齢に近い20代〜40代が中心ですが、学生さんや子育て世代、親世代の方まで、幅広くご来店いただいています。世代を超えて「ここに来たらみんなで綺麗になれる」と感じてもらえる、そんなサロンを目指しています。
未来の理容師に向けたメッセージ

バーバーなび:理容師を目指す若者に向けたメッセージをお願いできますか。
鈴木氏:髪を切るという行為は、単なる2〜3日の気分転換ではなく、もう少し長く心を整えてくれるような力があると思っています。だからこそ、施術の一回一回を丁寧に、大切に重ねていきたいと感じています。理容という仕事は、結婚式や就職面接といった人生の節目にも関わることができ、学生から親世代、さらにその上の世代まで、幅広い年代の方と接することができます。お医者さんにかかる頻度よりも、理容室に通うほうが多いという方はきっと少なくないと思います。だからこそ、より日常的で定期的にお客様と関わっていけるというのが、理容師という仕事の魅力だと感じていますし、人生に寄り添う仕事なのかもしれないと感じる場面もあります。これは理容に限らず、美容業界全体に言えることだと思いますが、本当に素晴らしい職業だということ、「ありがとう」という言葉を直接いただけるとてもやりがいのある仕事だと言うことをもっと多くの人に知ってもらいたいです。私自身、20代の頃は目の前の試験や課題に追われて、そうした実感を持つ余裕はなかったのですが、30代になってお客様との関わりがより深くなっていく中で、ようやくその価値に気づけるようになりました。「前回よかったよ」「あの後、こんなことがあってさ」と声をかけていただけると、本当にうれしくて、続けてきてよかったなと思います。
バーバーなび:これから理容師を目指す方が、どう前に進めばよいか悩むこともあると思います。そんな時に伝えたいことはありますか?
鈴木氏:業界を離れる理由としては、「思い描いていたイメージと現実のギャップがあった」という声が多いように思います。私自身も、人や環境には恵まれていたものの、働き続けるうえで戸惑いや迷いを感じる瞬間がありました。たとえば、お弁当を広げたタイミングでお客様が来店されて、昼食が取れるのは夕方になるとか。以前は今よりも労働基準が緩くて、体力的にとても厳しい日々でした。売り上げが伸びると嬉しかったし、やりがいもありましたが、それ以上に疲れてしまって、家に帰れない日もあって、「このまま続けていいのかな」と考え、いったん離れた時期がありました。
鹿田氏(母):実際、当時の娘の様子をそばで見ていて、早朝の開店準備のためにお店に泊まることもありましたし、終電に間に合っても疲れから乗り過ごしてしまう日もありました。本人なりに一生懸命に取り組んでいた姿は、今でも印象に残っています。サロンによっては、長く続く中で培われたスタイルを大切にされているところもありますが、時代とともに働き方への考え方が変わってきているのも事実です。誰かが悪いということではなく、「自分にとって心地よい働き方とは何か」を見つめ直すタイミングがあってもよいのではないかと思います。短い時間でもしっかりと休憩を取ったり、甘いものを少し口にするだけでも、気持ちが少し軽くなることがあります。どうかご自身の心と体の声にも耳を傾けて、大切にしていただけたら嬉しいです。
鈴木氏:私自身一度は現場を離れましたが、今振り返れば、その経験もすべて意味のあることだったと思えています。ブランクがあることを不安に感じるかもしれませんが、理容の世界には「また戻りたい」と思ったときに、受け入れてくれるあたたかい空気があると感じています。悩んだときは、一人で抱え込まずに、いったん立ち止まっても大丈夫。きっとまた、自分らしく働ける場所が見つかるはずですし、そういった経験も後になれば“話のネタ”になることもあります。お客様との関係性の中で得られる喜びは、何年経っても変わらないものなので、私自身も、迷いながらも続けてきてよかったと思えています。これから理容師を目指す方にも、すぐに結果が出なくても焦らずに、自分なりの歩み方で続けていってほしいと思います。
バーバーなび:素敵なメッセージをありがとうございました。