THE STYLIST INTERVIEW
理容師特集
HAIR the BooNieS 槻舘 学
今回は、王子神谷エリアで髪技理容師に出会うためにリサーチをしていたところ、HAIR the BooNiesさんを見つけたので取材を申し込んだ。すると代表の槻舘 学さんがインタビューに応じて下さることになったのでここで紹介していこう。槻舘氏は理容師歴23年、カウンセリングを通した自然な会話から距離を縮め、場を和ませるスタイルが魅力。自分らしさを大切に、空間そのものを提案する髪技理容師だ。
CREDIT : Photo/Yuki 文/Yuki 編集/Manami(バーバーなび)
HAIR the BooNies
槻舘 学
理容師歴:23年
出身校:中央理容美容専門学校
出身地:東京都
得意技術:喋り・喋るのも仕事のうち
得意スタイル:あえて決めてない・決まった型にはハマらない
こだわり:襟足はトリマーで締める
趣味:飲み歩き
サロン紹介
まずはサロンへの道順を案内しよう。東京メトロ南北線・王子神谷駅の2番出口を出たら、すぐ右手に見える「朝日クレス・パリオ王子」ビルの1階へ。その108号室にあるのが「HAIR the BooNieS」だ。
店内は、おもちゃ箱をひっくり返したような賑やかさが落ち着くという発想から、フィギュアや漫画がずらりと並べられている。またスタイリストが一対一で対応し、丁寧なカウンセリングと技術でその人らしさを引き出してくれるのも魅力の一つだ。駅からわずか徒歩1分以内の好立地なので、迷うことなくたどり着けるのも嬉しいポイントだろう。
理容師を目指したきっかけ
バーバーなび:こんにちは。本日はよろしくお願いいたします。まず、槻舘さんが理容師を目指されるようになったきっかけを教えていただけますか。
槻舘氏:よろしくお願いいたします。僕の学生時代はちょうど、テレビドラマの影響もあって“カリスマ美容師”が流行していた時代でした。学生時代にそのような姿を見て、「自分で髪を切れたらかっこいいだろうな」と思い、自分の髪を切ってみたりしていました。今思えば、どこかに憧れのような気持ちがあったのだと思います。そんなある日、両親の仲人を務めてくださった方から電話があり、その方が理容師であることを知りました。そこで何気なく「理容師、やってみたいです」と口にしたことをきっかけに、そのまま専門学校への進学を決めました。
バーバーなび:まさに一本の電話がきっかけだったのですね。
槻舘氏:はい、本当に不思議だなと思います。あのとき電話がなければ、今ごろまったく違う仕事をしていたかもしれません。ちょうどその頃、理容の人気も少しずつ高まっていた時期で、そういった流れにも後押しされたのかもしれません。正直に言えば、「これがやりたい」という明確な理由があったというよりは、流れに乗ったような面もありました。でも、専門学校に入ってみると、同期の中には「実家が理容室だから」という理由で進学した人と、私のように縁がなかった人とが半々くらいの割合でいましたね。
理容業界への思い
バーバーなび:理容業界全体に対して、どのようなお気持ちやお考えをお持ちでしょうか。
槻舘氏:やはり、長く続いてきた老舗の理容室が閉店していくのを見ると、どこか寂しさを感じます。業界全体のことを語れるほど立派な立場ではありませんが、正直なところ、自分の店が長く続けられることが一番の関心事です。近隣の理容室も大切な存在ではありますが、やはり競争相手でもありますので、「どうすれば自分のサロンが生き残っていけるか」を常に考えています。とはいえ、地域の一員としての意識も強く、地元の消防団に所属して活動したりと、地域に貢献したいという思いは大切にしています。
バーバーなび:サロンワークだけでなく、地域活動にも積極的に取り組まれているのですね。
槻舘氏:はい。店内には消防団の制服も置いていて、お客さまから「近くで火事らしい」と連絡をいただくことがあれば、直接現場に向かえるような体制をとっています。地元のお客さまが多い場所柄ということもあって、地域とのつながりはとても大切にしていますし、消防団で一緒に活動している仲間がサロンに来てくれることもあるので、そうしたご縁にも本当に感謝しています。
髪技理容師としてのこだわり
バーバーなび:それでは、施術におけるこだわりについて教えていただけますか。
槻舘氏:もちろん、お客さまは髪を整えに来てくださっているわけですが、それ以上に「遊びに来た」というような感覚で足を運んでいただけたら嬉しいです。中には施術後に「このあと飲みに行きましょうよ」とお声がけくださる方もいらっしゃいますし、そういった関係性を築けることに喜びを感じます。すべてのお客さまとそのような関係になれるわけではありませんが、そういう雰囲気を大切にしていきたいという気持ちがあるので、理容師として型にはまりすぎず、理容師らしさにとらわれすぎない自然体で接するということが、ひとつのこだわりかもしれません。
バーバーなび:ピシッとした理容室というよりは、誰かの家に遊びに来たような感覚になれるサロンというのも、魅力のひとつなのかもしれませんね。
槻舘氏:そうかもしれませんね。自分自身、理容室といえば漫画がたくさん置いてある場所というイメージがあったので、できるだけ多く並べるようにしています。店内の雰囲気には店主の趣味や人柄が自然と出てくると思いますし、それを楽しんでいただけたら嬉しいです。高校生くらいの若いお客さまはスマートフォンを操作していることも多いですが、中には漫画を読むことを楽しみに来てくれる人もいるので、そうしたやり取りの中から、「最近の若い世代はこうなんだな」と学ぶことも多く、自然な会話が生まれる場としてのサロンでありたいと考えています。
お客様へのメッセージ
バーバーなび:どのようなお客さまにご来店いただきたいとお考えですか。
槻舘氏:自分と同世代くらいの方が来てくださると、会話の共通点も多くて楽しいですし、素直に嬉しいですね。ただ、長年通ってくださっていたご年配のお客さまが亡くなられたときなどは、言葉にしがたい気持ちになることもあります。コロナ禍なども含めて、時の流れの中で変化していく現実を感じる場面は少なくありません。でも、そうしたお客さまの息子さんやお孫さんが通ってくださるようになったり、逆に息子さんが「父をぜひ」と勧めてくださって、そのご紹介でご友人が来店されることもあるので、こうした世代を越えてつながっていく関係性に触れられることは、この仕事ならではの喜びだと感じています。
未来の理容師に向けたメッセージ
バーバーなび:理容師を目指す若い方々へ、メッセージをお願いできますか。
槻舘氏:目指す過程では、つらさや壁にぶつかることもきっとあると思います。でも、それは本気で目指しているからこそ見えてくるものであって、同時にその中には必ず楽しい瞬間もあるはずです。だからこそ、つらいことばかりにとらわれず、楽しさに目を向けながら諦めずに進んでほしいと思います。私には今、美容の専門学校に通っている娘がいるのですが、その姿を見ていると、やはり華やかな世界に憧れていることが伝わってきます。ただ、理容・美容の世界は華やかさだけではなく、現場での厳しさや覚悟も必要だということを、しっかり伝えておきたいと感じます。私たちの世代は、そういった山も谷も経験してきて今があると思っています。たとえば、昔は「サロンワークではデニム禁止」「ジージャンを着ていたら怒られた」なんてこともありました。今では考えられないような決まりかもしれませんが、そういう時代を生きてきた上司や先輩がいる以上、今の若い方々が厳しいことを言われる場面もあるかもしれません。でも、そうした背景も含めて「そういう時代もあったんだな」と受け止めて、うまく切り抜けていってほしいと思います。どんなに時代が多様化しても、お客さまがどう感じるかが一番大事だと思います。見た目や服装がどんなものであっても、接客がしっかりしていれば、きっと信頼される理容師になれるはずです。
バーバーなび:素敵なメッセージをありがとうございました。