THE STYLIST INTERVIEW
理容師特集
理容こくぼ 小久保 光章
今回は、以前紹介した理容こくぼ 美石輝ルームの小久保 裕美さんに続き、理容こくぼの小久保 光章さんにも取材を受けていただいた。先代が開業してから50年以上の歴史を持つ老舗サロン。2025年4月にリニューアルオープンしたばかりのサロンのマスターこと小久保氏は理容師歴33年。華やかすぎず落ち着いた空間をコンセプトに技術や商材にも明確なこだわりを持つ髪技理容師だ。
CREDIT : Photo/Yuki 文/Yuki 編集/Manami(バーバーなび)
理容こくぼ
小久保 光章(Mitsuaki Kokubo)
理容師歴:33年
出身校:中央理容専門学校
出身地:東京都
得意技術:カット、アイロンパーマ
得意スタイル:超短髪、ナチュラルヘア、ツーブロック
こだわり:家では絶対味わえない贅沢を提供すること
趣味:ランニング、トレイルランニング
サロン紹介
まずはサロンへの道順を案内しよう。西武池袋線・清瀬駅の北口を出たら、正面のけやき通りを直進し、約800m進んだ先の志木街道との交差点を右折。さらに約300m進み、水天宮の信号を左折して200mほど進むと、左手に当サロンが見えてくる。駅から徒歩約15分の道のりだ。
理容こくぼは、創業61年を迎えた地域密着型の理容室を2025年4月にフルリニューアルした店舗だ。落ち着いた雰囲気と清潔感を備えた空間に生まれ変わり、現在は2代目の夫婦が丁寧に営んでいる。レディースシェービングにも力を入れており、シャンプーやブラシなどにもこだわりお客様に合わせた頭皮やお肌などの日頃のケアなどもサポートしてくれるので、お悩みに合わせて提案もしていただけることはとてもありがたい。店舗奥には完全個室のエステルーム「美石輝ルーム」も併設されている。
理容師を目指したきっかけ
バーバーなび:こんにちは。本日はよろしくお願いいたします。まずは、小久保さんが理容師を目指すようになったきっかけを教えていただけますか。
マスター:よろしくお願いいたします。きっかけは家が床屋だから、というところが1番ですね。両親は好きな仕事をやってもいいよとは言ってくれていましたが、小学生の時からお店の手伝いはよくしていました。いざ進路を決めるタイミングで、やりたいことは何かと考えた時にいくつか頭には浮かびましたが、それと家業を天秤にかけた時に、私が家を継がなければ、この床屋は1代で終わってしまうので、それはやっぱり忍びないなと思い、最終的に床屋さんをやろうと決意しました。
バーバーなび:ちなみに、何の仕事するか天秤にかけた他の職業は何があったのですか?
マスター:ツアーコンダクターです。仕事として日本各地に行けるという邪な気持ちではありました(笑)当時、先輩方に話も聞いて、自分が思っていた感じではなかったので、それであれば家業を選択しようという思いで決めました。また、高校の担任の先生にも相談し、サラリーマンには向いていないとはっきり助言いただいたことも影響してますね。そういったことも踏まえ、理容の道に進みました。
理容業界への思い
バーバーなび:理容業界全体に対して、どのようなお考えをお持ちですか。
マスター:組合含め、業界全体としてスピード感がないのではないかなと感じますね。もちろん組合という組織が必要なことはよく理解しています。政治的なアプローチをする際には必ず団体として動く必要があるのでね。
バーバーなび:そのスピード感とは具体的にどのようなことか教えていただけますか?
マスター:スタイルなどのトレンドなどが時代に合っていないと感じてしまいますね。年に一回、理容業界としての今年のスタイルが決まるのですが、流行りに合っているのか?と疑問に感じてしまう部分も正直あります。講習などもたくさんあり、そういった場での技術の習得はもちろん大事ではありますが、その内容がYouTubeで配信されるタイミングでそのスタイルが流行っているのか、など含めスピード感持ってやっていくことが今後大事なのではないかと思います。
また、美容師さんたちはYouTubeなどでたくさんの動画を発信していますよね。僕もそういった動画をよく見て、フェザーパーマをはじめ、色々な新しいパーマ技術を学んでいます。そして、それを自分の子どもに試したり、お客様にすぐに提案したりしています。ただ、こうした流行の移り変わりは本当に早くて、理容業界として新しい技術を取り入れようとしても、発信する頃にはもうブームが終わっているなんてことも少なくありません。ただ、やはり組合という団体の存在は必要だと思いますし、組合がないと大手企業などに追いやられてしま右可能性はありますし、理容業界として守らなければならないことは団体として政治に訴えていくことも必要なので、組合自体の存在はとても大切だと思っていますが、新しい形の改革もこれからは必要なのではと個人的には思っています。
バーバーなび:組合としての存在はもちろん重要で、その中でもスピード感や時代に合わせた変化は必要となるわけですね。
髪技理容師としてのこだわり
バーバーなび:それでは、こだわりについて教えていただけますか。
マスター:空間作りでは、裕美さんと二人で「シックな感じ、大人が落ち着いて座っていられるお店」というコンセプトとして考えました。特に色合いと空間の落ち着きを重視しましたね。
バーバーなび:お店に入った瞬間にシックで落ち着いた雰囲気は感じられましたね。
マスター:お客様にも気に入っていただけていると思います。「大きな声で話しちゃいけないみたいだな(笑)」と冗談で仰られる方もいますね。お客様の思うように過ごしていただけたらと思いますね。
技術面では、何と言っても顔剃りには深いこだわりがあります。痛みを伴うイメージを払拭するために、従来の石鹸ではなく、美容液を溶かしたものを熊野筆で顔に塗布します。さらに、直接肌に刃が当たらないバー付きの「フローレザー」を使うことで、お客様に痛みを感じさせない快適なシェービングを実現しています。
シャンプーも、毛穴の奥まできれいに洗い上げるために、スカルプブラシを使ってコーミングしながら丁寧に洗います。また、紫外線保護効果があり、べたつかず匂いもないヘアオイルを使用し、もちろん新規のお客様には、技術や商材について、丁寧に説明することを心がけています。
バーバーなび:細部にまでこだわりが詰まっていますね。それが全てお客様のためになるわけですからね。
マスター:ええ、「家では絶対できないことをここでやる」という思いですね。清瀬にいながら、まるで「都会の理容室に行っているような贅沢」を味わってもらいたいと思っています。
お客様へのメッセージ
バーバーなび:どのようなお客様にご来店いただけると嬉しいですか。
マスター:「誰でもいいですよ。来ていただければ」というのが正直なところです(笑)まずは一度来店して、お店の良さや雰囲気を感じてほしいですね。特に来てほしいのは、「美容室に慣れない方」や「30代以上の落ち着きを求めているお客様」です。華やかな美容室とは異なる、落ち着いた空間を気に入っていただけるかと思います。
バーバーなび:落ち着いたお店の雰囲気と、マスターや裕美さんの元気な接客もウリですからね!
マスター:そうなんです(笑)お店は落ち着いていますが、元気な接客とのギャップも楽しんでほしいですね。それから、特に力を入れているメンズシェービングについては、中高校生にもぜひ体験してほしいです。顔剃りをすることで毛が濃くなる、増えるといった誤解があるため、正しい知識と体験を通じて、プロのシェービングの快適さを知ってもらいたいですね。
未来の理容師に向けたメッセージ
バーバーなび:理容師を目指す若い方々に、メッセージをお願いできますか。
マスター:まずは、離職しないように頑張っていただきたいです。美容師と比較して、理容師は「店にお客様がつく」傾向が強いです。一度お客様が馴染んでくれれば、売上が安定して、仕事が楽しくなるはずです。あとは、人間関係も重要だと思います。師匠や先輩、同僚との関係性、そして職場との相性など、人間関係の課題は避けて通れない部分ですね。
個人的な経験から言うと、「仕事を趣味にしないこと」も一つのアドバイスかもしれません。私自身はボクシングというガス抜きがあったからこそ仕事を続けられましたし、プライベートとのバランスが重要ですよね。仕事に行きたくないなとか嫌いだなと思ったことは1回もないので、理容師という仕事が天職だったのかもしれません。
バーバーなび:仕事を心から楽しむためにもプライベートとのバランスは必要わけですね。素敵なメッセージをありがとうございました。