THE STYLIST INTERVIEW
理容師特集
2ND 髪 chos 武蔵浦和店 田村 亨
今回は、以前取材させていただいた2ND 髪 chos 武蔵浦和店でスタイリストとして活躍されている荻野 朱里さんが所属するサロンの代表・田村亨さんにお話を伺う機会をいただいた。田村氏は理容師歴18年。骨格に合わせたスタイル提案とヘアセットを得意とし、短髪から長髪まで幅広く対応する柔軟な技術力が特長だ。自身の感動体験を原点に、誰かの人生を変える“かっこよさ”を丁寧に届け続けている髪技理容師だ。

2ND 髪 chos 武蔵浦和店
田村 亨
理容師歴:18年
出身校:東京ヘアビューティー専門学校
出身地:北海道
得意技術:ヘアセット
得意スタイル:スパイキーショート
こだわり:骨格に合わせたシルエット調整
趣味:ギター
サロン紹介

まずはサロンへの案内をさせていただく。JR武蔵浦和駅の東口を出て、田島通りを南東方向に進む。「内谷」交差点を左折し、そのまま直進。「四谷2丁目」交差点を越えて少し進むと、左手にお目当てのサロンが見えてくる。徒歩で約15〜20分だ。バスを利用する際は、武蔵浦和駅から国際興業バスに乗り、「四谷」または「内谷」で下車。そこから徒歩5分ほどで着く。

2ND 髪 chos 武蔵浦和店は、雑誌掲載や著名人の来店実績もある、実力派メンズサロン。メンズカットのスペシャリストによる高い技術力と、丁寧なカウンセリングが融合し、トレンドを取り入れながらも“自宅でもセットしやすい”再現性の高いスタイルを提案してくれる。骨格や髪質に合わせたパーマスタイルも得意とし、洗練された印象をキープしつつ、朝のスタイリングも時短で決まるのが魅力。価格も通いやすく設定されているため、長く付き合えるサロンをお探しの方にもおすすめだ。
理容師を目指したきっかけ

バーバーなび:こんにちは。本日はよろしくお願いいたします。まずは田村さんが理容師を目指されたきっかけについて、教えていただけますか。
田村氏:よろしくお願いします。理容師になりたいと思ったのは、中学生の頃です。当時ずっと坊主だったのですが、初めて訪れたサロンで、自分の印象が大きく変わったのを実感し、「理容の力ってすごい」と素直に思いました。その経験がきっかけです。また、その頃に出会った恩師から「本当に理容師になりたいのか」と問いかけられたことも印象に残っています。その方が、中学生の私にハサミを一丁くださったんです。それがとても嬉しくて、「この道に進まなければ」と強く思うようになりました。いただいたハサミは、今でも大切に使い続けています。
バーバーなび:とても素敵なエピソードですね。そのハサミに込められた思いの強さを感じます。
理容業界への思い

バーバーなび:理容業界全体に対して、どのようなお考えをお持ちでしょうか。
田村氏:理容業界には、今でも「労働時間が長い」「修行が厳しい」といった昔ながらのイメージがあるように感じます。多くの人が理容師に憧れてこの世界を目指しますが、現実とのギャップに戸惑い、続けることが難しくなってしまうケースもあります。そうした中で夢を諦めてしまうのは、本当にもったいないことだと感じています。待遇面についても、業界全体で意識を高めていく必要があると感じています。特に給与は、「最低限」ではなく、安心して生活できる水準を確保することが大切であり、理容師になりたいという気持ちを持った人が、前向きにキャリアを積み重ねていける環境が求められていると思います。私たちのサロンでは、そうした課題に向き合うため、残業や深夜勤務のない働き方を基本としていますし、土日はアシスタントとして実践に入ることで、日々のサロンワークを通して学ぶスタイルです。仕事そのものが練習の場でもあるという考え方が、しっかり給与にも反映されていることから、半年ほどでスタイリストデビューを果たすスタッフもいます。もちろん、会社としての初期投資は必要になりますが、短期間でしっかり技術を習得できる環境を整えることは、これからの時代に必要な取り組みだと考えています。サロンの数が減少傾向にある中で、この仕事に憧れてもらえるような環境づくりは、業界全体で意識していくべきことだと思います。だからこそ、私たちが楽しんで働く姿をSNSなどで発信していくことも大切にしています。専門学校などで話をさせていただく機会もありますが、それだけでなく、理容師のイメージをポジティブに変えていくための発信は、これからますます重要になっていくと感じています。
バーバーなび:そうした思いがあって、SNSでの発信にも力を入れていらっしゃるのですね。
田村氏:はい。今はSNSを通して想いや空気感が伝わる時代です。発信の仕方を工夫すれば、理容業界に興味を持つきっかけにもなりますし、自分たちの仕事に誇りを持っていることが自然と伝わると思います。これからも、理容の魅力を多くの人に知ってもらえるように続けていきたいです。
髪技理容師としてのこだわり

バーバーなび:それでは、施術において大切にされている「こだわり」について教えていただけますか。
田村氏:こだわりを持たないことに、ある意味こだわっています。理容師にとって一番大切なのは、お客様に喜んでいただくこと。こちらの好みや押しつけではなく、「その方に何が似合うのか」を考えながら、お客様のご要望やお考えを丁寧に聞くようにしています。理容師はアーティストというより、職人という表現の方がしっくりくる職業だと思っています。
バーバーなび:いかにお客様に合ったものを提供できるか、という点を大切にされているのですね。
田村氏:そうですね。仮に僕が、圧倒的に有名なカリスマ理容師だったら、「おまかせで似合うようにお願いします」と言っていただけることも増えるかもしれません。でも実際は、ほとんどのお客様が「こうしたい」という具体的なイメージを持ってご来店されます。だからこそ、こちらが勝手に決めるのではなく、しっかり寄り添いながら一緒にスタイルをつくっていきたいと考えています。
バーバーなび:では、空間づくりの面で意識されていることはありますか。
田村氏:この武蔵浦和エリアにニーズがあると感じたことが、出店の大きな理由です。周辺にはアメリカンバーバーのような理容室がなかったので、そこに独自性を出せると考えました。サロンのデザインはすべて自分で行い、何が「今、かっこいいのか」を研究しながら空間づくりをしました。ただ、こだわりすぎることが逆効果になる場合もあります。たとえば、ネオン系のバーバーもかっこいいと思いますが、ターゲットがかなり限定されてしまう。だからこのエリアでは、バーバーらしさは残しつつも、メンズ全般に刺さるような“尖りすぎないかっこよさ”を意識して、立ち寄りやすい雰囲気に仕上げました。
バーバーなび:地域のニーズにしっかりと寄り添ったサロン展開をされているのですね。髪chosグループの南区白幡の店舗では、お子様連れでも来店しやすい空間づくりをされている印象も受けましたが、そういった取り組みについてはどのようにお考えですか。
田村氏:そうですね。南区エリアでは、地域に大きな小中一貫校ができたことをきっかけに、キッズカットのニーズが今後さらに高まると感じました。実際、周辺には子ども向けの専門サロンが少なく、「どこで切ればいいのかわからない」といった声、背景を踏まえ、子どもたちや親御さんが気軽に立ち寄れるような環境づくりを意識した店内の設計や空間づくりをこだわっています。これからもそれぞれのニーズに応え地域に根ざしたサロンの役割を果たしていけたらと思っています。
お客様へのメッセージ

バーバーなび:どのようなお客様にご来店いただけたら嬉しいと感じていらっしゃいますか。
田村氏:もちろん、どんな方にも来ていただきたいと思っています。ただ、あえて挙げるなら、これまで「バーバーに行ってみたいけど、少し入りづらい」と感じていた方や、「気にはなっていたけど、なかなかきっかけがなかった」という方にこそ来ていただきたいです。価格帯も来店のハードルにならないよう、通いやすい設定にしています。「このくらいの金額なら、一度試してみようかな」と思っていただけると嬉しいです。僕自身、初めて行ったサロンで「髪型でこんなにも変われるんだ」と感動した経験があるので、同じようにお客様にも“感動体験”をしていただけたらと思います。もともとおしゃれに興味がなかった方でも、「ちょっと背伸びしてみようかな」と感じていただけるような場所でありたいですし、髪型を通して、その人の人生が少しでも前向きに変わるきっかけになれたらと思います。
バーバーなび:これまで一歩を踏み出せなかった方にとっても、背中を押してくれるような場所になりそうですね。とても素敵なお話、ありがとうございます。
未来の理容師に向けたメッセージ

バーバーなび:理容師を目指す若い方々に向けて、ぜひメッセージをお願いいたします。
田村氏:理容の魅力のひとつは、長く続けられる職業であるという点にあると思います。美容業界は年齢を重ねるにつれて厳しさが増すという話も耳にしますが、理容は50代、60代になっても現場で活躍できる職種です。会社としての体制も、上場企業や公務員ほどではなくとも、安定した基盤を整える努力を続けており、安心して働ける環境づくりを目指しています。努力次第で活躍の場が広がり、頑張った分だけ評価される仕事ですし、サラリーマンとは異なる“一回一回の達成感”を味わえるのもこの仕事の面白さのひとつです。最近では、美容室に劣らないほど洗練された理容室も増えてきました。おしゃれに敏感な若い世代にも魅力が伝わるようになり、自分自身もスタイルを楽しみながらお客様をかっこよく仕上げられるという点に、理容の大きなやりがいを感じています。理容師という仕事に対して、「自分も目指してみたい」と思っていただけるようなきっかけを作っていけたら嬉しく思います。
バーバーなび:理容の良さをもっと多くの方に知っていただきたいですね。
田村氏:そうですね。昔ながらの雰囲気を大切にする理容室も素敵ですし、アメリカンバーバーの要素を取り入れた新しいスタイルも、今の時代に合った魅力があると思います。そういった多様なスタイルを、これから理容を志す方々にもぜひSNSを通じて一緒に発信していけたらと思います。私たちの会社では、2030年までに最低基本給を40万円に引き上げることを目標に掲げ、実現に向けて取り組んでいます。そうした取り組みが、理容師という仕事の価値を高め、業界全体にとって良い流れになると信じています。また、労働環境の面からも魅力を感じていただけるよう、職場の雰囲気づくりにも力を入れています。
例えば、社内の人間関係によるストレスを減らすために、プライベートに近いイベントなどを取り入れ、日頃から円滑なコミュニケーションが生まれるような工夫をしています。
以前ある音楽イベントの話になるのですが、ライブで前列の席を取れたことに喜んでいた観客の方が、さらに前の席に親子連れが来たことで戸惑い、やや苛立った様子を見せていた場面がありました。しかし、その親子が特別な事情で招かれていたことが、スタッフの説明によって明かされました。お子さまは余命を宣告されており、「思い出を残してきてください」と医師に勧められ、このライブに足を運んでいたそうです。その説明を聞いた瞬間、周囲の空気が変わり、先ほどまで苛立っていた方も、穏やかな表情に変わっていたのが印象的でした。この出来事から、私は「情報の力」というものをあらためて強く感じたと同時に、背景や事情を知らないままだと、不満や誤解が生まれてしまうことがあると感じました。しかし、そこに適切な情報があることで、人の受け取り方も、行動も、大きく変わると思います。理容業界においても同じように、「なんでこうなったのか、なぜこういうことを言ったのか」といった背景を、スタッフ同士でしっかり共有できる場が必要だと感じています。だからこそ、日頃から円滑にコミュニケーションが取れるようなイベントや取り組みを取り入れ、働く一人ひとりが安心して意見を伝えられる環境づくりの大切さを実感しています。これから理容師を目指される方には、そう言った背景を踏まえた上でサロン選びをしてほしいと思いますし、これからも理容業界を一緒に盛り上げていってほしいと思います。
バーバーなび:素敵なメッセージをありがとうございました。