THE YKP 中島 寛文

今回は以前バーバーなびでご紹介させていただいたBarber YAGIのYAGIさんにご紹介いただき、THE YKPの中島 寛文さんを取材させていただいた。中島氏は理容師歴3年、美容師としての経験を土台に、独自の感性でバーバースタイルを構築してきた。センスと技術を武器にする髪技理容師だ。


CREDIT : Photo/Yuki 文/Yuki 編集/Manami(バーバーなび)


THE YKP

中島 寛文

理容師歴:3年半
出身校:国際理容美容専門学校
出身地:東京都
得意技術:パーマ
得意スタイル:フェードスタイル
こだわり:スピード、丁寧なライン作り、お客様に合わせたテンションでの接客
趣味:サーフィン・バイク・ジム探し中

サロン紹介

まずはサロンへの道順を案内しよう。京王線・聖蹟桜ヶ丘駅の西口改札を出たら、信号を渡ってOPA側へ直進。ファミリーマートとケーキ屋を通り過ぎ、不動産屋の手前で左折。すぐ先にある伊野ビルの2階入口が「THE YKP」だ。駅から徒歩およそ4分の距離だ。

店内は白を基調とした空間に黒のバーバーチェアが映える、ミニマルで洗練されたバーバー。床一面には六角形のモザイクタイルが敷き詰められ、無機質な中にもどこか温かみを感じる仕上がりとなっている。一歩足を踏み入れると、まるで海外のショップを思わせるようなスタイリッシュな雰囲気が広がり、非日常感と居心地の良さが共存する。丁寧な技術とトレンドを押さえたデザイン提案で、自分らしさを大切にする大人の男性から支持される一軒だ。

理容師を目指したきっかけ

バーバーなび:こんにちは。本日はよろしくお願いいたします。まずは、中島さんが理容師を目指すようになったきっかけを教えていただけますか。

中島氏:よろしくお願いいたします。理容師を志すきっかけとなったのは、いわゆる“バーバーブーム”でした。SNSなどでバーバースタイルを目にする機会が増え、その世界観に惹かれていく中で、自然と興味を持つようになりました。従来の「床屋」というイメージが大きく変化していたことも、自分の背中を押してくれた要因のひとつです。美容院で働いていた頃から、女性のスタイルでは可愛いショートよりも、かっこいいショートをつくるほうに魅力を感じていましたし、ストリート感のある無骨な雰囲気やタトゥー文化なども好んでいたため、自分のスタイルを表現できるバーバーという環境に惹かれましたね。正直なところ、美容師を目指していた当時、理容師を志す人を見て、理容はダサいと感じていた面もありましたが、今は理容のもつ洗練されたかっこよさに価値を見出すようになりました。技術面においても、女性のロングスタイルとは異なる、職人的な繊細さが求められる点に理容の魅力があると感じています。ちょうどその頃、美容師免許を持っている人が週一の通学で理容師免許を取得できる制度が始まり、自分も挑戦しようと決意しました。自然な流れでの選択ではありましたが、この制度がなければ理容師を志すことはなかったかもしれません。

バーバーなび:そうした背景があって、ダブルライセンスの取得に至ったのですね。

中島氏:はい。女性のお客様への接客経験があることは、オールラウンドに対応できる強みのひとつだと考えています。現在は新規の女性のお客様の受付は行っていませんが、これまでの経験は確実に活かされています。

理容業界への思い

バーバーなび:理容業界全体に対して、どのようなお考えをお持ちですか。

中島氏:理容と美容が制度上で分かれている現状については、将来的に統合も視野に入れた、より柔軟な仕組みがあっても良いのではないかと感じています。ダブルライセンスを取得したことで両者の違いや専門性を理解したうえで、それぞれの特長を活かしながら、時代に即した制度のかたちについて考えるようになりました。たとえば、まつ毛エクステの施術を専門にしたい方が、美容師資格の取得を通してカット技術など幅広い内容を学ぶ必要がある現行制度には、改善の余地もあるのではないかと思います。基礎技術を身につけることの大切さを前提としつつも、より現場の実態に沿った制度設計が進むことで、幅広い人材が理美容業界で活躍しやすくなるのではないかと感じています。

バーバーなび:業界としての変化が求められているのかもしれませんね。

中島氏:そうですね。制度が少しでも柔軟になっていけば、これからの若い世代もより理容の世界に入りやすくなると思いますし、将来的な担い手の確保にもつながっていくはずです。より多くの人にとって魅力的な業界になることを願っています。

髪技理容師としてのこだわり

バーバーなび:それでは、こだわりについて教えていただけますか。

中島氏:スピード感のある施術と、丁寧なラインづくりにこだわっています。お客様ごとにテンションや距離感を調整しながら、心地よいコミュニケーションを取ることも大切にし、仕上がりだけでなく滞在中の空気感や関係性も含めて、その人にとってちょうど居心地のいいバーバーでありたいと考えています。

バーバーなび:店舗展開について、どのようにお考えですか。

中島氏:当初は、いずれこの世界観に共感してくださる方が多い土地を選び、もう一店舗を展開したいという思いを持っていました。しかし今は、それ以上にこの店舗での基盤づくりに力を注ぎたいという気持ちが強くなっています。新たなスタッフを迎え入れ、価値観や感性を共有できる仲間とともに、チームとしての魅力を高めていきたいと考えています。現在、求人も行っておりますが、これまで一人で運営してきたこともあり、新たな挑戦に戸惑うこともあります。それでも、この空間を大切にしてくれる方と出会い、しっかりと向き合いながら信頼関係を築いていきたいと思っています。将来的に店舗を広げる機会があったとしても、この軸はぶらさずに進んでいきたいと考えています。

お客様へのメッセージ

バーバーなび:どのようなお客様にご来店いただけると嬉しいですか。

中島氏:やはり、自分の趣味や感性が合う方とお話しできるのは、何よりの楽しみですね。共通の話題で盛り上がれば、時間もあっという間に過ぎてしまいます。逆に、明るいお客様が続いた後に落ち着いた雰囲気の方がいらっしゃると、自分自身も少しリラックスできる時間になっています。私はおしゃべり好きなので、インターバルが必要なんです(笑)そのバランスがあるおかげで、充実した一日を過ごせていると感じています。

バーバーなび:きっと、この空間の心地よさと中島さんの明るくあたたかい人柄に惹かれて、多くのお客様が集まってこられるのですね。

未来の理容師に向けたメッセージ

バーバーなび:理容師を目指す若い方々に、メッセージをお願いできますか。

中島氏:この仕事は、やると決めたからには、人一倍努力する覚悟が必要だと思いますし、本当に好きでないと続けられない職業だと思います。職人的な仕事でもあるので、今の若い世代の中には、プライベートを大切にしたいという価値観を持っている方も多いかもしれません。ただ、理容の世界は、下積みの時期にどれだけ練習できるかが大切であり、自ら先輩の背中を追いかけて学ぶ姿勢が必要です。国家資格にはいろいろありますが、その中でも美容・理容は比較的取得しやすい部類に入るかもしれません。それでも簡単に高収入が得られるわけではなく、その技術をどう磨き、どう活かすかがすべてです。お客様の中には、会計士や税理士など難関資格を目指して必死に努力されている方もいます。同じように国家資格を持つ職業として、自分の技術に責任を持ち、練習を積み重ねていく必要があると感じています。もしこの仕事に情熱を持てないのであれば、無理をせず別の道を選ぶのもひとつの選択です。ただ、好きだと思えるなら、とことん突き詰めていってほしいです。かつて店長を務めていた際には若い世代の教育にも携わりましたが、価値観の違いを感じることも多くありました。プライベートを大切にする生き方ももちろん尊重すべきものですが、それと引き換えに技術の習得を怠ったまま、待遇に不満を抱くのは筋が違うようにも思います。厳しい言い方になるかもしれませんが、しっかりと努力を重ねてこそ、仕事の幅も報酬も広がっていくのだと思います。私自身、今もなお練習を続けています。それは“やらされている”のではなく、純粋に楽しいからです。最近ではコーンロウという編み込み技術を1年以上かけて習得し、ようやくメニューとして提供できるようになりました。ハサミとはまったく異なる技術でしたが、新しい挑戦が形になる喜びは何ものにも代えがたいものがあります。スタイリストになったからといって学びを止めてしまうのではなく、むしろそこからが本当の勝負だと感じています。プロ野球選手がプロになったからといって練習をしなくなるわけではないのと同じで、私たちも常に成長を求められる立場です。今後はこの編み込み技術をさらに磨き上げ、業界全体に新しい風を吹かせられるような存在になれたらと意気込んでいます。「カットもできる、編み込みもできる」そんな強みを持ったサロンにしていきたいと思っています。

バーバーなび:今もなお、技術に新しく挑戦し続けていらっしゃるのですね。とても素敵です。本日は素敵なメッセージをありがとうございました。

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